気付いていますか?
「知的財産法」は「民法」の特別法です。

本の帯に書かれたこのキャッチコピー、そして民法から知財法を読み解こうというコンセプトに一本取られた!という感じです。


民法から知財法を考えることは“遠回り”だけれども

知財を保護する法理論においては民法が原則であり、特許法・著作権法等の各知財法はその例外である。ならば、原則である民法を理解せずに知財法を学ぶべからずと。

そのためこの本では、まず民法の基礎理論を解説した上で、各知財法がどのように結びついているかを丁寧に紐解いていきます。

ここで注意をしておきたいのは、基礎理論を担う民法が決して分かりやすい法律ではないということです。この本においても、限られたスペースの中で民法の基礎理論について丁寧に解説を試みているものの、決して容易に理解できるものとは言えません(私も一応大学時代は民法専攻でしたが、この本で繰り広げられる民法論は水準が高く、知財法よりも民法そのものについて勉強させられたような感覚に陥ると共に、自分の民法理解の浅はかさを自覚しました。)

そのわかりにくい民法の解釈にゆだねていては知財の保護が難しくなったからこそ、特別法が直接に保護規定を定めているのであって、学習者として割り切るなら、ダイレクトに特別法を学習する方がよほど分かりやすいわけです。

しかしその“遠回り”=思考訓練をくぐり抜けてこそ、真の理解に到達できるというのが、この本の最大のメッセージ。

実務家としては、この本のコンセプトどおりまず学術的に民法を理解するという“遠回り”をすることには、かなりの歯がゆさを感じると思います。知財実務にダイレクトに役立つ本というより、法理論の本質をつかむための本であることを覚悟の上で、ご購入頂いた方がいいと思います。


知財法の限界、そして民法の限界

ところで私はこの本を読んで、民法の原則論だけでは対応できない時代の要請に応えるためにつぎはぎに作られ改正されてきた各知財法の限界、そしてさらに、原則たる民法の限界をも感じざるを得ませんでした。

時代の変化に合わせて各特別法をつぎはぎにいじるだけではなく、時には民法そのものも見直し、変化させる必要がある。

著者はこの本に、そんなメッセージも込めているのではないでしょうか。


この本は企業法務戦士の雑感さんの下記エントリで知りました。感謝です。
[企業法務][知財][書籍]ベースは民法にあり。

また、著者である弁護士金井先生が本書の解説・誤植訂正ブログを立ち上げられています。参考までに。
『民法でみる知的財産法』の解説

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