週刊エコノミスト7/29号の特集「音楽がタダに」は、iTunesやSNSといったCDによらない音楽流通によって、レコード会社・CDプレス〜ストアがどこまで追い詰められているかという視点で現在の音楽産業を俯瞰する、興味深い特集でした。

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著作隣接権を頼りに生き延びようとするレコード会社

CD販売での収入が減ってきた日本のレコード会社にとっては今、“原盤権”と呼ばれる著作隣接権が頼みの綱。

たとえば、「着メロ」であればメロディーだけの使用なので著作権料として1曲5円または販売収入の7%を使用料として著作者に支払えばよいのに対し、「着うた」の場合は著作隣接権者としてのレコード会社の原盤権が及ぶため、200円の配信料のうち50%〜70%が原盤使用料として設定されているとのこと(アメリカでは一般的に営業収入の数%という設定が通常)。

この着うたにおけるレコード会社のぼったくりによって、着メロでは儲かっていた多くの配信事業者が、赤字に追い込まれているという実態もあるようです。

そんな中まさに昨日、この原盤権を濫用したとして公正取引委員会が独占禁止法19条(不公正な取引方法の禁止)違反を認定した審決が出たとのこと。
いつも拝見している弁護士川村哲二先生のブログに紹介されていましたので、以下リンク貼らせていただきます。
携帯電話の着うた提供業務の共同ボイコットに対する審決(公取委)


「CDは無くならない」??

既存のCDを前提とした音楽産業が停滞する中での生き残り策として、この着うたのような利益率の高い配信関与モデルへの積極的展開を画策しているのかと思いきや、各レコード会社は
音楽配信にはテスト・マーケティングの側面があり、CDの需要を掘り起こしている
人間には物への愛着があり、好きなCDを手元におきたい人は多い
せいぜいCD7に対し配信3の割合。将来に両者が逆転することはないと思う
と、あくまでもCD流通による収入を前提と考えているようです。

対して、坂本龍一氏が
あと2〜3年以内にCDパッケージの大部分はなくなり、いずれCDは特別な希少版、豪華版としてしか発売されなくなると思う
とインタビューに答えているのが対照的。
こちらの方がよっぽどユーザー実感に合っているように思うのですが…。


レコード会社は著作隣接権の意味を勉強しなおした方がいい

CDというメディアを通じた音楽の流通=著作物の頒布に寄与していたからこそ、レコード会社の著作隣接権として認められてきたのが原盤権。

しかしながら今後、アーティスト自身がPCを使ったDTM(Desk Top Music)で“原盤”を制作し、iTunesやSNSなどのインフラを使ってCD流通ルートに頼らないダイレクトな頒布をする流れがメインストリームになれば、もはやレコード会社には頒布という面での寄与はなくなり、著作隣接権者たりえなくなります。

着うたでのぼったくりぶりや、前述の「CDは無くならない」というような時代錯誤な希望的観測コメントを見ている限り、レコード会社は著作隣接権を既得権益としか捉えられておらず、「自分たち抜きでは音楽は流通しない」という妙なプライドが邪魔をして、この危機をきちんと認識できていないように思います。

ユーザーがどのような形での音楽著作物の頒布を望んでいるのかをもっと敏感に掴み、ユーザーが望む頒布の方法に寄与できるようなビジネスモデルへ積極的に変わらなければ、レコード会社の存在価値は無くなってしまうことに、早く気づいてほしいと思います。

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