この本で分析されている「新宗教ビジネス」とは
・創価学会
・立正佼成会
・阿含宗
・真如苑
といった、戦後生まれの宗教法人。
最近はオカタイ本ばかり読んでいるので、たまには宗教とカネや権力との結びつきを暴くブラックジャーナルでも読んでリラックス、あわよくば、特定商取引法に抵触するブラック企業の審査の視点の足しにでも・・・ぐらいな気持ちで読み始めたんですが、「新宗教ビジネス」の意外なまでのまともさを知ることに。
そしてそれ以上の収穫として、今までよく分かろうともしていなかった「宗教法人」という存在の意味と、宗教法人に非課税特権が与えられている理由を理解するというお土産まで付いてきました。
宗教団体を法人化する意味
宗教団体は宗教法人として認証(認可ではないので形式審査)されることで法人格が与えられます。
では何のために法人格を得る必要があるのか?
その答えは、宗教法人法第1条第1項にあります。
「この法律は、宗教団体が、礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持運用し、その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため、宗教団体に法律上の能力を与えることを目的とする。」
神社も教会も、「礼拝の施設その他の財産」を所有している。しかも、所有しているのは、寺の住職や神社の神主、教会の牧師や神父といった個人ではない。それは、個人のものではなく、宗教団体のものである。そこで、法人格をもつ必要が生まれる。
つまり、信仰に欠かせない礼拝の施設等を、信者が共同所有する必要があるから、というわけです。なるほどです。
宗教法人の収入が課税されない理由
さらに目からうろこだったのが、宗教法人の収入が課税されない理由についてです。
宗教法人が行う宗教活動において、金を出すのは信者である。宗教法人は、信者が出した金を、信者のために使う。儀式や儀礼を行うなり、そうしたことを行うための場を建設したりするなど、信者の金が信者のために使われる。
企業が課税されるのは、自分たちが出した金ではなく、客などが支払った金を、給与など自分たちのために使うからである。つまり、他人の金を自分たちのために使えば課税され、自分たちの金を自分たちのために使っても課税されない。
この説明でイマイチ分かりにくい方のために、お寺とその信者である檀家の関係を例に分かりやすくしてくれています。
檀家は、寺の墓地に自分の墓を作ることで、寺の信徒、つまりは宗教法人のメンバーになる。
檀家は、宗教法人のメンバーであるのだから、布施という行為は、自分が所属している宗教法人の維持運営のために資金を出すという意味を持っている。
つまり、檀家は法要を営んでもらう対価として布施をしているわけではなく、布施をすることで、自分の属する宗教法人を支えるという義務を果たしているのである。
自分は寺のメンバーであると考えれば、寺に入ってくる収入に課税されることには納得しなくなるだろう。何で自分たちが支払った金を自分たちで使うのに課税されなければならないのか。檀家の立場に立ってみれば、宗教法人に課税するなど、もってのほかということになる。
つまり、
・信者とは、顧客ではなく株主や社員のような内部者であり、
・礼拝などの宗教活動は、顧客に対するサービスではなく
内部者による内部者のための活動であり、
・お布施などの金員支払いは、内部者による活動費の負担である
ということ。
図らずも、雑学の粋を超えて法律知識を2つも勉強させていただきました。