ケース

Xは、不動産会社Yより、従業員の福利厚生の目的で新築リゾートマンションの1区画を5,000万円で購入。あわせて当該リゾートマンションの購入者が優先的に利用できる併設の会員制スポーツクラブ会員権の入会金および預託金として1,000万円をYに支払った。

リゾートマンション売買契約書には、スポーツクラブ会員権付き(別途入会金・預託金が必要)である旨の記載があり、またスポーツクラブの会則には、リゾートマンションの区分所有権を譲渡した場合は会員たる地位を失う旨の定めがあった。

Xが契約を締結した時点では、リゾートマンションと併設のスポーツクラブ内テニスコート・レストラン等が利用できる状態だったが、ゴルフコース・屋内プールは1年以内に順次完成する見込みで、その旨が広告・パンフレットに明記されていた。
ところが、契約締結から2年経ってもゴルフコースは未完成・屋内プールは未着工であった。マンションとクラブ会員権の市価は半値以下となり、売却損が出る状況となり、XはYに対する訴訟提起を含めた金銭的解決を模索している。


問題

設問(1)
スポーツクラブの会員権1,000万円を取り戻すためのXの法的主張を検討せよ。

設問(2)
リゾートマンションの購入代金5,000万円を取り戻すためのXの法的主張を検討せよ。


回答

設問(1)
契約締結時点において、広告・パンフ等で1年以内に完成予定とされていたゴルフコースと屋内プールが2年経った今も完成していないという事態から、Yの履行遅滞が認められ、これを理由とした契約解除を主張し、代金返還を請求できる(民法541条)。
契約により即時解除権が定められていない場合は、相当の期間を定めてその履行を催告する必要がある。

設問(2)
Xの売買契約締結の目的は従業員の福利厚生のためであり、併設されるスポーツクラブの利用ができなければ本件リゾートマンションの購入目的も達成されない。一方で、リゾートマンション単体としての工事は完成し、利用ができる状態となっていることもあり、これをいかに評価すべきかという問題がある。
この点、リゾートマンションの売買契約には、スポーツクラブ会員権付き(別途入会金・預託金が必要)である旨の記載があり、またスポーツクラブの会則には、リゾートマンションの区分所有権を譲渡した場合は会員たる地位を失う旨の定めがあったことから、リゾートマンションの売買契約およびスポーツクラブの利用契約はそれぞれ別個の契約ではなく、売買契約とスポーツクラブ利用契約が一体となった契約と解すべきである。
従い、設問(1)と同じくスポーツクラブの利用が正常にできない履行遅滞の状態であるを理由に両契約を解除し、売買代金の返還請求を行えばよい。


要復習ポイント(自分用メモ)

・法定解除の場合は相当の期間を定めてその履行を催告


参考文献

・法定解除の「相当の期間」について(P89〜)
 「催告中に定められた期間そのものではなく、解除までに実質的に
 与えられた猶予期間の長さを考慮して判断している。 
 催告期間そのものが不相当であっても相当の期間の経過後に
 解除は可能であるし、催告期間を定めていなくても、相当な
 期間経過後に解除すれば有効である。」



(ビジネス実務法務検定試験1級公式テキスト Case8を基に検討)



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