ケース

Yは自社ビルとして利用するため、Xが所有するビルを買取ろうと交渉した結果、Xが現在入居中のテナントを退去させ、20億円で売却することで合意した。
以下その契約書である。

(第1条)
XはYに対し末尾表示の物件を全室空室とした上、売買代金金20億円にて売り渡すものとし、Yはこれを買い受ける。
(第2条)
Yは本契約締結と同時に手付金として金1,000万円をXへ支払う。
(第3条)
YはXに対し代金を次の通り支払う。
|羇峩發箸靴栃神21年3月30日までに金1億9千万円
∋超發箸靴峠衢権移転登記の時までに金18億円
(第4条)
XはYに対して前条△了超蘯領後直ちに本物件の所有権移転登記をしなければならない。
(第5条)
前条の登記完了の時、本物件の所有権はYに移転する。
(第6条)
各当事者のいずれかが不履行の時は、相手方に対し通知催告を要せず、本契約は解除されたものとする。Xが不履行のときは、Yに対し第2条の金員の倍額を損害賠償として支払うものとし、Yが不履行の時はXは第2条の金員の返還を請求することができない。
(第7条)
本物件について現賃借人からXに対する明渡がなされない時、あるいは明渡が著しく遅延した時は、XYは協議の上、本契約を解除することができる。


問題

買主Yの立場で、問題と思われる点、誤っていると思う点、不足点を指摘し、どのように改めるべきか述べよ。


回答

・手付金1,000万円の性質が不明確であるので、第3条におい
 て充当される旨明記すべきである。
・第3条において、所有権移転登記と代金支払いが同時履行の
 ように規定されている一方、第4条では代金支払いがYの先
 履行とされているので、同時履行とすべきである。
・第5条においては、所有権移転は登記完了のときではなく、
 引渡し時または代金支払い時とすべきである。
・第6条について、不履行の際に自動的に解除とするのでなく、
 通知催告の上解除することとする。
・第6条ではXの不履行時の損害賠償額が手付けの倍と予定さ
 れているが、そもそも買主の立場として売主側からの手付倍
 返しの解除を認めるべきでないこと、損害賠償額が契約金額
 に比して限定的に過ぎることから、このような規定は避ける
 べきである。
・第6条の「Yが不履行の時はXは第2条の金員の返還を請求
 することができない」は「Yが不履行の時はXは第2条の金
 員の返還を要しない」とする。
・第7条について、全室空室とすることがXの義務であること
 を明確にするため、明渡しが期日までにできなかった場合は
 Xに損害賠償をさせるべく、損害賠償額を予定すべきである。
・物件引渡しまでの危険はXが負担する旨規定すべきである。
・物件の担保責任に関する条件を明記すべきである。
・固定資産税、印紙税、登記費用の負担を規定すべきである。
・紛争解決、裁判管轄を定めるべきである。また売主が外国会
 社等の場合は準拠法も規定すべきである。


要復習ポイント(自分用メモ)

・不動産は所有権移転登記時に物件の引渡しを受けるのが通常。
・特定物売買の危険負担は債権者負担なので、債務者主義へ変更。
 基礎的なことを漏らさないように。
・固定資産税、印紙税、登記費用の負担は思いつかず。


(ビジネス実務法務検定試験1級公式テキスト Case9を基に検討)



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