ケース

画商Aは絵画1点をBに対し分割払いで販売した。
BはC銀行から融資の増担保要求を受け、同絵画を譲渡担保として占有改定により引き渡した。
その後、Bは資金繰りに窮し当該絵画をDに売却、占有改定により引渡した。
さらにBは同絵画をEに対し代物弁済として占有改定により引渡した。
この状況でBは手形の不渡りを出し、BおよびCは債権の回収遅延を生じさせている。


問題

設問(1)
絵画について、
・Aの先取特権
・Cの譲渡担保権
・Dの所有権
・Eの所有権
の優劣を論じよ。

設問(2)
Aが絵画の所有権を代金の弁済完了まで留保していた場合、(1)の結論はどうなるか。

設問(3)
Eが占有改定による引渡し後絵画を実際に引き取っていた場合、(1)の結論はどうなるか。

設問(4)
(3)の場合でEに即時取得が認められたとして、Cの法務担当者の立場で絵画を取り戻すことができる可能性について検討せよ。


回答

設問(1)
Cの譲渡担保権が優先する。
まずD、Eの所有権については、占有改定による即時取得にすぎず現実の引渡しを行っていないことから、所有権を取得しているとは言えないため、劣後すると考える。
その上で、残るAの先取特権とCの譲渡担保権の優劣が問題となるが、民法333条により、先取特権は債務者がその目的である動産を第三取得者に引渡した後は行使できない旨規定されており、譲渡担保権を占有改定により設定する行為はここにいう動産の第三取得者への引渡しにあたることから、先取特権は及ばないと考えるべきである。

設問(2)
Aの所有権留保が優先する。
Aが所有権留保をしていた場合は、Cの譲渡担保権はそもそも成立しない。D、Eについても占有改定による即時取得であり所有権を取得しているとは言えない。

設問(3)
現実の引渡し時点においてEが善意無過失であればEの即時取得が優先し、Eが悪意または有過失であればCの譲渡担保権が優先する。

設問(4)
Eによる代物弁済としての絵画の取得について、詐害行為取消権の行使と破産法上の否認権の行使について検討する。
前者について、代物弁済を受けた時点でEがBの経済的困窮の事実と他の債権者の存在を認識していたかが問題となる。この点につきEが認識していたことを立証すれば、詐害行為取消権は認められ絵画を取り戻すことができると考える。
後者については、債権者としてBの破産手続き開始をBが自ら申し立てるか、Eが債権者としてこれを申し立てることが前提となるが、AがEに対し代物弁済を行ったその行為が、破産財団を減少させ、破産債権者を害する行為であることを主張することにより、破産管財人に否認権を行使させ絵画を取り戻すことができると考える。


要復習ポイント(自分用メモ)

・先取特権と譲渡担保権の優劣に関する3説
 〔泳333条適用説
  上記回答どおり
 ¬泳334条類推適用説
  動産の譲渡担保権者は民法330条の第一順位の先取特権と
  同一順位の効力
 L泳319条拡大解釈説
  民法333条の引渡しには占有改定は含まれず、仮に含まれ
  ると解しても319条(先取特権に関する即時取得の規定の
  準用)の拡大解釈により先取特権の即時取得を認める
・即時取得全般について根拠条文うろ覚え。


(ビジネス実務法務検定試験1級公式テキスト Case28を基に検討)



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