ケース

Xは、競売の開始決定がなされている隣地のAビルを取得し、自社所有のBビル(一部賃貸中)と合わせて再開発を検討している。
Aビルの登記簿及びテナントの状況、Bビルの賃貸状況は以下のとおりである。

Aビルの登記簿記載事項
平成18年10月25日抵当権設定登記
平成19年5月25日競売開始決定に基づく差押の登記

・賃貸人Y1
 Aビル 平成18年7月1日から3年間の賃貸借契約
 入居していない
・賃貸人Y2
 Aビル 平成18年7月1日から3年間の賃貸借契約
 入居中
・賃貸人Y3
 Aビル 平成19年4月1日から3年間の賃貸借契約
 入居していない
・賃貸人Y4
 Aビル 平成19年4月1日から3年間の賃貸借契約
 入居中
・賃貸人Y5
 Bビル 賃貸人甲からXの承諾を受けて転貸
 ただしXと甲は賃貸借契約を合意解除している。
・賃貸人Y6
 Bビル 賃貸人乙からXの承諾を受けて転貸
 乙は事実上倒産し6箇月家賃を滞納しているため、
 Xは乙との賃貸借契約を解除


問題

Xが抵当権の実行手続きにより平成19年11月15日にAビルを競落し、買受人となった。
XはA・Bビルの入居者に退去を直ちに請求し再開発を進めたいが、この場合に、それぞれのテナントY1〜Y6との賃貸借契約の効力がどうなるか、否定される場合は法律及び判例に照らし、直ちに明渡請求ができるかどうか答えよ。


回答

・Y1
抵当権設定登記前に賃貸借契約を締結している。しかし、入居をしていないことから建物の引渡しを受けていないものとして賃貸借の対抗要件を備えていないこととなる(借地借家法第31条)。
従い、Xは明渡請求することができる。

・Y2
抵当権設定登記前に賃貸借契約を締結し、かつ入居をしている。建物の引渡しを受けたものとして賃貸借の対抗要件を備えていることとなる。
従い、Xは明渡請求できない。

・Y3
抵当権設定登記後の賃貸借契約であり、かつ入居もしておらず、対抗要件を備えていない。
従い、Xは明渡請求することができる。

・Y4
抵当権設定登記後の賃貸借契約であるが、入居しているため、詐害行為と認められない限り、Xの買受のときから6箇月間は明け渡しの猶予が認められる。
従い、Xは6箇月間は明渡請求できない。

・Y5
Xと甲との賃貸借契約は合意解除されているが、賃貸人の同意ある転貸の場合はこの場合においても原則として転借人の賃貸権は消滅しないというのが判例の立場である。
従い、Xは明渡請求できない。

・Y6
賃借人の債務不履行を理由とする解除により賃貸借が終了した場合には、転貸借契約についても、賃貸人が転借人に対して退去を請求した際に転貸人の転借人に対する債務の履行不能により終了するというのが判例の立場である。
従い、Xは明渡請求できる。


要復習ポイント(自分用メモ)

・借地借家法31条・・・建物賃貸借の対抗要件=建物の引渡し
・転貸借に関する判例
 …詑濘佑瞭碓佞△訶沼澆両豺腓蓮転借人に不信な行為がある
  等の特段の事情で元の賃貸借契約を合意解除した場合を除き、
  元の賃貸借契約が解除されても転貸借契約は解除されない。
  (最判昭38年2月21日ほか)
 賃借人の債務不履行を理由とする解除により賃貸借が終了し
  た場合には、賃貸人が転借人に対して目的物の返還を請求し
  たときに転貸人の転借人に対する債務の履行不能により転貸
  借契約が終了する。
  (最判平9年2月25日)


参考文献

・適法な転貸がなされた場合の法律関係と判例について
 (P211〜214)



(ビジネス実務法務検定試験1級公式テキスト Case11を基に検討)


「企業と人との新しい結びつき」の実現を目指して頑張ります。ご支援いただける方はこちらをクリック!(blogランキング)