ケース

AのS支店は、Bからイベント用販促品300万円分を購入した。

この代金支払日の10:00に、BからA本店宛て「弊社が貴社に対して有する一切の債権は乙に譲渡する。」旨の内容証明郵便が到達した。
A本店の経理担当者甲は速やかにBとの取引状況を調査したが、14:00になって漸くS支店での取引の存在を認識、一方でS支店では11:00に送金手続きを終えて15:00にはBの丙銀行口座に入金記帳は完了していた。

さらに16:00ごろには、A本店にBより「弊社が貴社に対して有するイベント用販促品の売掛代金債権は丁に譲渡する。」旨の内容証明郵便が到達した。


問題

設問(1)
乙の請求に対し、甲はどう対応すべきか。

設問(2)
丁の請求に対し、甲はどう対応すべきか。

設問(3)
代金支払日が到来しておらず、銀行送金手続きも取られていなかった場合、甲としては誰に支払うべきか。

設問(4)
(3)の場合、甲は弁済供託することができるか。


回答

設問(1)
支払いを拒否すべきである。
債権譲渡通知を10:00に受けているとは言え、事前に通知もない債権の譲渡について本店と支店との間の調査に数時間要することはあり、またそもそもBによる債権譲渡通知においても譲渡債権が十分に特定されていないという問題点とあわせ、AによるBへの支払いには過失は認められない。
従い、11:00に行われたAのBに対する振込みは債権の準占有者たるBへの善意無過失による弁済として有効であり、支払いは拒否できるものと考える(民法478条)。

設問(2)
支払いを拒否すべきである。
債権譲渡通知は乙宛てと丁宛てそれぞれ同日に到達しているが、丁宛ては後に到達しており、乙に劣後する。

設問(3)
Bに支払うべきである。
丁に対する支払いは、(2)で検討したとおり乙に劣後していることから行うべきではない。一方乙への支払いについても、(1)で指摘したとおり譲渡債権が十分に特定されていないことから、行うべきではない。

設問(4)
弁済供託はできない。
債権譲渡の競合はしているものの、到達日時も判明し優劣も確定していることから、弁済供託の原因としての債権者不確知にはあたらない。


要復習ポイント(自分用メモ)

・弁済供託における債権者不確知


(ビジネス実務法務検定試験1級公式テキスト Case31を基に検討)


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