ケース

Yは、高級食器や美術的工芸品を販売する専門店を経営している。
顧客Aより、Yに対し「ティーカップの把手が突然取れた。1年しかもたないのは不良品である。新しいカップに替えて欲しい。」とのクレームがあった。Aには1年前にYの店舗で英国製のティーカップとソーサーのセット一組を15,000円で販売していることが分かっている。
また同日顧客Bから「まだ一度も使用していない茶器にヒビが入っていた。最初からあったヒビだと思うので返品したい。代金を返して欲しい。」とのクレームがあった。Bには2日前に志野焼の茶器1点を30万円で販売している。


問題

設問(1)
Aの請求の法的根拠について評価し、どのような現実的対応をとるべきか述べよ。

設問(2)
Bの請求の法的根拠について評価し、どのような現実的対応をとるべきか述べよ。


回答

設問(1)
Aに販売した英国製カップとソーサーのセットは不特定物である。不特定物の売買契約においては、引き渡した時点で商品に明らかな欠陥がありそれを引き渡したことにYの責めに帰すべき事由がある場合には、不完全履行として債務不履行責任を負うことになる。債務不履行責任が認められれば、Aが請求する代替品への交換も完全履行請求権の一つとして認められうる。
1年経過してからこのような欠陥を主張してきている点は多少の悪質性を感じるが、債務不履行責任の消滅時効は10年間であり、法的には責任が発生しうる。
具体的な対応としては、債務不履行の不存在の立証責任がYにあることもあり、Aに引き渡したカップが元々欠陥商品であったのか否かを明らかにする。カップをAから預かるなどして使用状況を調査するほか、カップに構造上の欠陥はなかったか、同じロットで生産されたカップで同様の事象が発生していないか等調査の上で、欠陥が無いと証明できることが確認できるかどうかを確認し、その結果をもってAの要求に応じるか否かを検討する。

設問(2)
Bに販売した志野焼の茶器は特定物である。特定物の売買契約においては、瑕疵があった場合には無過失で瑕疵担保責任を負うことになる。瑕疵担保責任が認められれば、法定の損害賠償請求権として代金の返還請求も認められうる。請求の時期としても、瑕疵担保責任は特約の無い限り1年間であるので問題ない。
具体的な対応としては、瑕疵の不存在の立証責任は本来Bにあるものの、茶器をBから預かるなどしてこれを調査し、梱包・運送にあたり問題はなかったか、引渡し時において明らかに目視で確認できるヒビはなかったのか販売員に確認するなどの調査を行い、その結果をもってBの要求に応じるか否かを検討する。


要復習ポイント(自分用メモ)

・不特定物の欠陥は瑕疵担保責任ではなく、債務不履行責任と
 して対応


参考文献

・売買契約における売主の担保責任―債務不履行責任と瑕疵担保
 責任の比較(P121〜152)。



(ビジネス実務法務検定試験1級公式テキスト Case15を基に検討)


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