ケース

銀行Xは、平成15年4月1日付けで、平成19年3月31日を最終返済期日とする10億円の金銭消費貸借契約をAと締結した。
Xは、この担保としてA本社の土地建物(以下本社物件という)に10億円の第一順位抵当権の設定をうけ、またAの筆頭株主であるBより極度額30億円の連帯保証金を取得した。
BのAに対する出資比率は37%で、Bの取締役2名がAの取締役を兼任しており、うち1名は代表取締役に就いている。

その後Aは、リストラの一環として、平成18年4月1日より月額賃料500万円、敷金6,000万円で本社物件をCに賃貸し、AのBの社屋を借り受けた。ところが、このようなリストラの甲斐なく業績は悪化し、また平成18年頃から高利金融に手を出していたことがBに発覚、Bが支援を打ち切ったため、平成18年12月末日に第1回手形不渡、平成19年1月に破産手続開始決定を受け、破産管財人Yが選任された。

Aは高利金融のZに対し、平成18年7月ごろCに対する将来の賃料債権を担保として譲渡しており、第1回手形不渡発生後、AよりCに対して内容証明郵便により賃料債権をZに譲渡した旨の債権譲渡通知が配達されていた。
CはAの破産手続開始決定後も本社物件を使用し続けているが、賃料は敷金の返還請求権と相殺すると主張し、支払いを留保している。
Xは、残債権5億円に対し、本物件の売却見積もり価格が2億円程度であるため、競売の申立は見合わせている。


問題

設問(1)
X銀行の立場から
)楴卻件にかかる賃料債権について、いかなる権利行使が可能か。
賃料債権を担保として譲り受けたZ社に対して、どのような主張
 が可能か。
H紳从銚△鬚發辰督体岨拱Гさ遡海料蟷Δ鮗臘イ垢襭辰紡个靴
 どのような主張が可能か。

設問(2)
破産管財人Yは、Zの債権譲渡担保に対し、いかなる対抗手段を取りうるか。

設問(3)
Cの賃料支払い留保に対し、破産管財人Yはどのように争うことができるか。

設問(4)
X銀行がBから保証を取得する際に留意すべき事項は何か。


回答

設問(1)
…馘権に基づき、物上代位によりCに対して賃料の支払いを求めることができる。
■擇脇碓貂銚△砲弔譲渡担保の対抗要件を先に具備しているが、民法304条の「払渡または引渡前」には債権譲渡は含まれないと主張し、抵当権に基づく物上代位の差押はZの譲渡担保権に対抗できると考える。
I澡睚峇埓禅畍△鰐榲物の返還時に発生することから、賃料債権を差し押さえることにより、Cが賃貸人であるAに対して有している敷金返還請求権による相殺には対抗されない。

設問(2)
Zに対し、破産法72条に基づき、Aによる債権譲渡担保権の設定とその通知について否認権を行使することにより、Zに対抗できる。

設問(3)
Cの相殺の主張に対し、Yとしては、相殺適状にないことをもって対抗する。破産手続開始決定後に敷金返還請求権が権利として発生してはじめて、Cはこれを自働債権とする相殺が可能となると考えるべきである。

設問(4)
Bの取締役会による承認を得させ、その取締役会の議事録を確認することが必要である。
Bの取締役2名がAの取締役を兼任し、うち1名は代表を務めており第三者のために会社と取引を行う間接取引として無効を主張されるおそれがあること、およびBのAに対する保証が多額の借財に該当し、取締役会の決議が必要であることが考えられるからである。


要復習ポイント(自分用メモ)

・抵当権に基づく物上代位は債権譲渡担保より優先
・敷金返還請求権は目的物の返還時に権利発生
・破産法の否認権
・子会社の取引に関する親会社としての取締役会決議の有無確認


(ビジネス実務法務検定試験1級公式テキスト Case36を基に検討)


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