これまた今の旬なテーマ「解雇」を読み解くのにぴったりな本。こんな本を今年の3月に出すというタイムリーさに拍手。

なんでもかんでも「解雇は違法、だからヨクナイ」と報道しているメディアの皆様も、この本を読んで法律の世界の現実と、解雇規制の経済理論を知っていただくのがいいかもしれません。




整理解雇事例に焦点を絞った調査で見える現実

本書の特色は、比較的新しい“整理解雇”についての裁判例のみを徹底的に集めて分析している点。

そんな中から見えてくるのは厳しい現実。
そもそも裁判まで争う解雇事件が少ない中、2000年から2004年末までに終局した509件のうち、復職が実現したのは約7%ということ。

勝訴しても、なんのための戦いだったのかがわからなくなるという結末。労働者にとってはこれが現実です。


崩れつつある「4要件説」

先日のエントリでも、教科書的な整理解雇の4要件は判例で確立されたものではないことを述べました。
整理解雇の議論から生まれる、解雇権濫用法理の新たな潮流

この本の調査分析によってもそれは裏付けられています。それどころか、以下のような興味深い傾向も見られるようです。
四要件の解雇の必要性、解雇回避努力義務、人選の適切性、協議義務の履行のすべてに関して裁判所は必ずしも判断を下さず、解雇の有効無効を判断しているケースが多い。そこでそれぞれの要件に関して判断が下されているケースのみを分析対象として、分析を行った。分析結果は、(1)整理解雇の必要性に関しては経常利益の赤字に関して言及がある場合に必要性が認められるケースが多いこと、(2)解雇回避努力義務に関しては新規採用の停止や退職勧奨の実施がその認定に貢献すること、(3)人選の適正性に関しては組合役員が解雇対象者となった場合に是認されにくいこと、(4)協議義務に関しては(中略)退職勧奨が行われたこと、解雇通知から解雇までの日数が90日以上あることの二つが重要であることが明らかになった。

つまり、大雑把に言って
・経常赤字である
・新規採用を停止している
・組合役員をターゲットにしていない
・退職勧奨を行っている
・通知から90日間の期間を置く
これらの要素が満たされていれば、整理解雇が認められる傾向にあるということ。
もはや「要件」と呼べるような厳格さは、そこにはありません。

やはり私の感覚どおり、解雇の要件は緩くなっている気配があります。


解雇規制の経済論から導かれる解雇から身を守る方法

ちょうど今日、池田信夫さんがこんなことを書かれています。
[中級経済学事典] 事後の正義(池田信夫blog)
目先の正義感で規制を強化して市場をゆがめる思考法を、法と経済学で事後の正義とよぶ。それ自体は悪いことではないが、不況になっても労働者を解雇できなくなると雇用コストが上がるので、企業は正社員の雇用をますます減らす。それは結局、失業者を増やし、労働者を不幸にするのである。

法と経済学に疎い私には、この“解雇規制の経済論”を理論的に述べることはできないのですが、この本ではこのことをこんな風に説いていました。
雇用関係の所有権を労働者に与える法制と、それを企業に与える法制の間では、実現する資源配分に違いはないという、いわゆる「コースの定理」が成り立つ。というのも、効率的な交渉が行われている限り、雇用関係が継続するかどうかを決めるのは共同余剰の大小関係にのみ依存するからである。したがって、自由な交渉が可能な環境では、解雇規制には効果も無ければ実害も無い。(中略)実際、賃金が生産性より高い水準で固定されていれば、企業は解雇したいが、生産性が失業利得よりも高いならば、解雇は非効率である。

法理論はさておき、経済学的な観点だけで言えば、
「自分の生産性を賃金より高めれば、必然的に雇用は守られる。」
ということでしょうか。

つべこべ言わずに、自分の生産性を高める努力をすることにします。

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