「企業分析」というと、普通はB/S、P/L、C/F上の数字をこねくりまわして“ナントカ率”を眺め、同業他社と比較する、というパターンに陥りがち。

それに対してこの本『デューデリジェンスのプロが教える 企業分析力養成講座』の分析手法は、数字を無闇にこねくりまわさず、対象企業を様々なフレームワークに当てはめて、仮説をたてながら分析する点が特徴的。

著者も自身のブログでこういっています。

数字を見ない(創業記)
さて、企業分析だが、最近、思うのは「財務諸表」などの数値を一切みない、やり方を模索している。

財務が読めるようになると、すぐにそこに戻ってありきたりの視点で企業を評価してしまう。いわば、偏差値や出身校をみて採用面接を行う企業の担当者のように。

そうではなく、その企業のビジネスモデルや理念、めざすところの本質を定性的・多面的に深く見つめることだけに注力し、その後に「さて数字の方はこんな感じかな?」とあらかじめ予想をしておいて、「答え合わせ」として数字をみる、という風にしてはどうだろうか?

このような訓練をすることで、数字だけをみていたのでは気づかない、企業本来の特性・強さを初めて伺い知ることができるのだと思う。
まさに“仮説思考型”の企業分析のお手本として、この本はあらゆるビジネスパーソンの脳を刺激してくれることと思います。


企業分析の新フレームワーク

本書で著者が提案するフレームワークがこちら。
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企業の収益構造をあらわすP/Lを中心にしながらも、その収益構造に影響を及ぼす周辺要素(社会動向・資本市場・業界・競争構造etc)との関連性を常に頭において分析をしましょう、というもの。

このフレームワークに、実在する日本の公開会社9社(スタバ/三菱地所/創通/ビックカメラ/GABA/JR東日本/横浜銀行/ミクシィ/任天堂)を当てはめて、言葉ではなかなか表現し得ない“周辺要素との関係性”に潜む課題・問題点を整理してビジュアルで理解させてくれる著者。

そしてこの基本フレームワーク以外にも、マトリックスやビジネスシステムなどのスタンダードなフレームワークをフル活用してオーソドックスな分析をしたかと思えば、他ではあまりお目にかからない著者オリジナル(?)の飛び道具的フレームワークも紹介してくれます。

その中でも特に印象的で私も企業分析に使いたいと思ったのがこの2つ。

・キャッシュフローマトリックス
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営業キャッシュフローを横軸、投資キャッシュフローを縦軸にとった4象限のマトリックス。
ここに時系列でキャッシュフローの変遷をプロットしていくと、対象企業が右下の投資・安定期にいるのか、左下の破綻期に向かっているのかが一目瞭然に。

・売上/利益の面グラフ
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“面グラフ”のテクニックは、私も以前このブログでご紹介をしましたが、実際の活用例としての好例がこちら。
売上シェアを横軸、利益シェアを縦軸ととることで、その企業の事業構造が手に取るように分かります。


フレームワーク思考ができる人の3つの特徴

フレームワーク思考ができる方は、多くのビジネスパーソンの支持を得て自然とビジネスグル化していきます。

昔で言えば大前研一さん、最近で言えば勝間和代さんが代表的な例でしょう。そしてこの本の著者、山口揚平さんが次世代のビジネスグルとなっていく予感がします。

そして、このお三方のようなフレームワーク思考を武器とするビジネスグルには共通する特徴があるなあと、この本を読みながら思ったのでした。

1)視野の広さ
「この考え方は他の企業・シチュエーションにおいても普遍的に応用ができるのか?」を自分自身に問いながら、常に俯瞰で考えられる視野の広さ

2)根気強さ
ちょっとした発見を普遍的な法則に昇華させるまで、諦めずに考え探し続ける根気強さ

3)サービス精神の強さ
根気強く探し発見した成果物を(著書などを通して)他人とも分かち合あいたいというサービス精神の強さ

33歳、私よりもたった1歳上で高い見識を持ち合わせている著者。恐れいります。