一般消費者向けに広く提供されるサービス約款・サービス利用規約と名の付く消費者契約にはつきものの、お決まりのフレーズがあります。

たとえばこれは弊blogがお世話になっているライブドアの利用規約。
ライブドアは、本サービスの利用に関して利用者が被った損害又は損失などについては、一切の責任を負わないものとします。
会社側に債務不履行があろうと、不法行為があろうと文句を言うなといわんばかりです。

このような免責条項は、消費者契約法第8条により、無効となります。

ならば、ということで、故意や重過失の場合のみ責任を負うことを表現したこんな免責条項ではどうでしょうか。
当社は、サービスを利用するにあたって会員に生じた一切の損害(精神的・財産的損害を含む一切の不利益)について、故意または重大な過失がない限り責任を負いません。

残念ながら、これも同法8条により無効になります。

下手をすると軽過失の特別損害すら免責できなくなる


この消費者契約法が困るのは、条項のうちの無効な部分をなかったことにするだけでなく、その条項すべてを無効化する力を持っているという点にあります。

これにより、債務不履行責任や不法行為による損害賠償責任はすべて民法の原則どおりに処理されることとなり、重過失まで至らない単なる(軽度の)過失であっても、通常損害に加え、二次的な被害などの特別損害の賠償責任を負う可能性までもが排除できなくなります。ネット上で検索するだけでもこの手の消費者契約法違反の条項がたくさん出てきますので、このことは意外に気付いていない法務パーソンも多そうです

消費者契約法では通常損害の範囲を正当な範囲で限定したり、特別損害を免責することまではNGとしていないので、せめてこの部分はきっちり排除しておくべきです。

ということで、消費者契約法違反にならないようにしつつ通常損害と特別損害とを適度に免責するために考えてみた案がこちら。
サービスを利用されたことにより利用者に損害が発生した場合に、当社に軽度の過失が認められるときであっても、それにより直接かつ通常生じる範囲内の損害に限り責任を負い、その他の特別損害については責任を負いません。


こんなの見つけた・・・「ここまでやるか」な条項例


私はちょっとナシかなと思うのですが、某SNS事業者さんの利用規約にはこんな“工夫”が。消費者契約法対策の知恵の一例として、ご紹介させていただきます。
第19条 免責事項
1 弊社は、ユーザーの通信や活動に関与しません。万一ユーザー間の紛争があった場合でも、当該ユーザー間で解決するものとし、弊社はその責任を負いません。
2 弊社は、本サービスの内容の追加、変更、又は本サービスの中断、終了によって生じたいかなる損害についても、一切責任を負いません。アクセス過多、その他予期せぬ要因で表示速度の低下や障害等が生じた場合も同様とします。
(中略)
7 本利用規約又はその他の利用規約等が消費者契約法(平成12年法律第61号)第2条第3項の消費者契約に該当する場合には、本利用規約及びその他の利用規約等のうち、弊社の損害賠償責任を完全に免責する規定は適用されないものとします。この場合においてユーザーに発生した損害が弊社の債務不履行又は不法行為に基づくときは、弊社は、当該ユーザーが直接被った損害を上限として損害賠償責任を負うものとします。ただし、弊社に重過失がある場合に限ります

いったんは1項・2項で「一切免責」と明記することでユーザーを牽制しつつ、いざ裁判に持ち込まれたときには法的に無効化されないように7項でカバーしておくというアイデア。
しかも上限をユーザーに実際に生じた直接被害に限定する念の入れよう。

法務担当者と顧問弁護士さんが相当意識して考え抜いたことがうかがえる、他には見られない興味深い事例です。消費者との紛争経験知が高い同社ならではの工夫ですねぇ。(ただ、最後の「ただし、弊社に重過失がある場合に限ります」の置き方が私が顧問弁護士から聞いた見解を踏まえるとまだ無効化される余地をはらんでいるような気もしているのですが)。


最後に、消費者契約法の参考書をご紹介しておきます。私はQ&A形式の法律解説書はあまり好きではないのですが、この本は免責まわりの解説が充実していたのでオススメ。

ガイドブック消費者契約法


あとは内閣府のサイトに上がっている逐条解説を読んでいただければ完璧かと。
逐条解説(内閣府消費者の窓)