この本は、もっと評価されていいと思います。

なぜって、リスクマネジメントの一番の肝になる作業にもかかわらず、ほとんどの本にその具体的な手順や方法が言及されていない“リスクマップ”の作り方が、この本には丁寧に書いてあるのですから。

プロフェッショナル・リスクマネジメント―風評、メディア・クライシス、リスクマップ、内部統制



リスクマップ作成の難しさ

リスクマップは、管理部門が長いベテラン社員が1人いれば、その人が「こんなリスクが昔からあるけど・・・このリスクの大きさはだいたいこの辺かな?」と鉛筆なめなめ図にプロットしていくだけで、それっぽいものができてしまうもの。

しかしこの方法では、その網羅性や客観性の低さから、リスクマップへの信頼は得られません。

とはいえ、全社員にアンケートをとって作成しようとしても、リスクが大小さまざまにたくさん集まりすぎるばかりで、かつどのリスクが重いのか軽いのか比べようも無くなり、かえってまとめられなくなります。

このようなリスクマップを作成していく作業の流れ、すなわち
1)うまいことリスク情報を抽出し
2)うまいことグループ化し
3)うまいことスコアリングして
4)図に表現する
という過程を、どんな塩梅で進めていくべきかは、リスクマネジメントに携わる者の悩みどころだと思います。


リスクマネジメントコンサルのノウハウを公開

この「リスクマップをうまいこと作る」というテーマについて、日本でも一歩リードしているのではと私が評価している会社が、損保ジャパンリスクマネジメント。

実はこの本の「第3編 総合リスクチェック」のパートは、同社のRMシステム支援室長が執筆を担当されているのですが、先ほど述べたリスクマップ作成作業の標準的な流れとノウハウ(リスクの集め方、スコアリングの際の重み付け基準の定め方etc)の一部が、気前良く公開されています。

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さらに、このようなマップ作成を通じて行うリスク分析・評価作業をどのように継続し、リスクマネジメントシステムとして昇華していくべきかというところまで、分かりやすく解説。

ちなみに、第1編は風評リスクへの対応の仕方、第2編は有事の際の記者会見の要諦という、リスクマップとは関係ないピンポイントなテーマが取り上げられているものの、それはそれで興味ある方には面白い内容になっています。

リスクマネジメントにかかわる方(経営者であれば関わらない方はいないと言ってよいと思いますが)にとっては、この第3編だけでも何度も読み直して勉強する価値があると思いますよ。