法律書の中でも、ライセンス契約の本は読者層が広いようで、書店に行くと経営者向けだとか、技術者向けだとか、いろいろなタイプの解説書がありますね。

その中で、今年5月に出たばかりのこの本は、完全に知財担当者・法務実務者向けの、ちょっとハイレベルな層を意識した本と言ってよいと思います。

ライセンス (知的財産法実務シリーズ)




独占権を認めながら一方で独占禁止って、矛盾してない?

全183ページ中、前半約70ページがライセンス契約の理解の前提となる専用実施権、通常実施権、仮専用/通常実施権、中用権といった権原に関する知識の整理となっていて、続く後半約110ページは具体的なサンプル付き契約条項の解説という構成。サンプル条項は和文/英文両方収められています。

正直私が面食らったのが、前半パートのそこかしこに出てくる、ライセンス契約と独占禁止法との関連性でございまして。

公取からいくつかガイドラインが出ていることぐらいは知っていて、その昔経営法友会のセミナーにも出て勉強したとは思うのですが。こんなに厳しい目線で独占禁止法への抵触が問われるとはあまり認識しておらず・・・。
たとえ合意された実施料であっても、それが不当に高額であると判断され、かつかかる高額の実施料を徴収することに合理性が見いだせないような場合には、実施料を定める条項が「不公正な取引方法」に該当し、独占禁止法上違法であると判断される危険性がないわけではない
ライセンシー毎の実施料の違いが著しく、かつ当該差別に合理性が見いだせないような場合には、不公正な取引方法に該当し独占禁止法上違法と判断される可能性があると考えるべきであろう。
確かに、ライセンサーとして優越的な地位に立てるケースは多いとは思います。しかし、最後は需要と供給の市場原理と契約自由の原則に従ってその時その時のライセンシー候補との交渉を経て合意に達して実施料を決めるわけで、そこに正当性や合理性を求めるっていうのはいかがなものかと。

何を今さらの「そもそも論」になってしまいますが、市場における公正な競争の例外として、権利者に時限付き独占権を認めることでインセンティブを与えるのが知財の本旨であるはず。せっかく独占したその権利の価格決定に独占禁止の視点が入るなんて、やっぱりなんか矛盾していると思います。

思えばライセンシーとしてライセンス契約を結ぶ立場にはあるものの、ライセンサー側に回った経験は多くなく、ライセンス契約を検討する際にはあまり独占禁止法との関連性を意識したことはありませんでしたけれど、ライセンサーはライセンサーで、いろいろ大変なんですね。