この本をご紹介しようと思っていたら、丁度こんな事件が。

国際自動車、事業許可取り消しへ…大手タクシーで初(YOMIURI ONLINE)
大手タクシー会社「国際自動車」(東京都港区)が、国土交通省関東運輸局の監査で運転手の違法な超過勤務を指摘され、来月16日に聴聞を受けることがわかった。

聴聞の結果、違反事実が確定した場合、一般乗用旅客自動車運送事業者としての許可が取り消される見通し。大手タクシー会社の事業許可が取り消されれば初めてとなる。

国交省などによると、今年2月に同社赤羽営業所に監査を行い、タクシー運転手の勤務実態を調べたところ、違法な超過勤務が見つかったという。

事業許可取消の直接の原因は労基法違反ではなくて道路運送法上の違反ではあるものの、ずさんな労働時間管理が、事業の存続をも揺るがす問題に発展することもある、という好例(悪例?)。

折りしも、2010年4月に施行されることとなった労基法改正への対応とあわせ、こんなことになる前に企業の視点から労働時間管理のリスクを総点検するにあたって、これほどの良書はないと断言できる1冊を見つけました。

「労働時間管理」の基本と実務対応



社労士テキストの上を行く分かりやすさ

私はこれまで、少し細かい(マニアックな)労基法知識を勉強するのには、図表の分かりやすさや知識の細かさ含め、社労士試験のテキストがベストだと思っていましたが、

この本は、複雑な労働時間制度の全体像を捉えやすいように2色刷りの図表を多様していたり、
nakaibon

社労士テキストにも乗らないような細やかな背景知識ではあるけれど実務でしばしば分からなくなるところが丁寧に拾い集められていたり、
実務上大変わかりにくいのは、行政通達(昭63.1.1基発第1号)では、労基法38条1項但書について、「事業場内の労働時間」も含めてみなし労働時間であると指導している点です。しかし、別の行政通達(昭63.3.14基発150号)では、この点「事業場内で労働した時間については別途把握しなければならない。そして、労働時間の一部を事業場内で労働した日の労働時間は、みなし労働時間制によって算定される事業場内で業務に従事した時間と、別途把握した事業場内における時間とを加えた時間となる」とはっきり述べています。この二つの通達の関係は、前者から後者に変わったものととらえ、後者に従うべきです。

と、社労士テキストのはるか上を行ってるなと。
労基法に関しては腕に覚えがあるという方ほど、それを感じ取っていただけるはずです。

著者は、中町誠法律事務所にて使用者(企業)側で労働事件を専門とする若手弁護士、中井智子先生。存じ上げませんでしたが、タイトルに冠されているとおり「実務対応」の最前線で戦っていらっしゃる優秀な弁護士であることが、一読して分かります。

人事担当として自分の会社の労働時間管理にリスクを感じている方、人事・労務コンサルタントを名乗る方は、読んで損はない1冊であると、重ねて断言します。