平成21年7月25日初版発行なので、おそらくこの個人請負と労働者性をテーマにした本としては最新の本。

このような本が立て続けに出版されている現状からも伺えるように、各社とも雇用契約ではない「働かせ方」を真剣に模索されているようですね。

急増する個人請負の労働問題―



全48件の労働者性裁判例を網羅

石崎信憲法律事務所と言えば、労働問題を専門とする事務所の中でも使用者(企業)側の急先鋒ともいうべき存在として有名だと思いますが、この本は懸念された使用者側への過度な偏りはなく、かなり中立的な意見を意識して書かれた模様。

特徴は、個人請負の労働者性が争われた裁判例を徹底的に網羅している点。その数全48件。これだけ偏ったテーマで裁判例を集めた本もなかなかお目にかかりません。

そして、その48件を
 ア 傭車運転手
 イ 大工等建設業従事者
 ウ 作業従事者
 エ 外務員・販売員
 オ 集金人・検針員
 カ コンピューターのシステム開発
 キ 専門業務従事者
 ク 芸能関係者
 ケ 構内業務従事者
という9種の典型的契約形態に分けた上で、認定された事実を
・労働者性が肯定される要素
・労働者性が否定される要素
に分解し、簡潔な判例評釈をつけながら、裁判所における労働者性判断の勘所をこっそりと囁いてくれます。


告示37号は個人請負の労働者性を判断する基準ではない

著者がP37で主張している視点が、とてもシンプルなところが何よりも気に入りました。
まずは、その者が自己の計算と危険のもとで業務を行っている者か否か、つまり、「事業者性の有無」を検討すべきと考えます。そして、事業者性が明らかな場合には、労働者には該当しないと判断できることになります。

この事業者性が認められさえすれば、労働者には該当しないという考え方は、厚生労働省昭和61年告示37号を労働者性判断の基準と捉えて、告示に列挙された要件の一つ一つについて該当する・しないを検証する他の本によく見られるような考え方とは大きく異なります。

そもそも告示37号というものは、派遣と請負の区分について言及した「だけ」のものであって、これを基準に個人請負の労働者性を判断するのは間違いであると。
そこまでキツイいい方はしていないものの、暗にそんなメッセージをにじませたこの主張に、この個人請負と労働者性というテーマに取り組んだ著者としての自信が伺われます。

請負の労働者性が争われた事例をたくさん眺めてみたい方、今まで告示37号を信じきってこの問題を捉えていた方にとっては、得るところがたくさんある本といえるでしょう。