日経新聞法務面の「傍聴席」に端を発した
・弁護士はどこで育成されるべきか?
・法曹人口を吸収すべきは企業か?
というテーマについての企業法務戦士の雑感のFJneoさんdtk's blogのdtkさんの意見交換が、法務ブログ界隈で話題になっています。

このタイミングでの発言はまったく機を逸しているのは承知の上で、法務系ブロガーとして、また人材ビジネスに携わるものとして、ちょっと違った切り口も交えて意見を述べさせていただければと思います。


弁護士はどこで育成されるべきか?

この件に関しては法科大学院の一期生が卒業しだしたころから何度か話題にしてきました。

インハウスローヤーを雇用することの難しさ
法曹人口急増問題の解決策は、初期育成と西田さんにあり
法科大学院生を犠牲にした法曹市場の需給調整に反対します

これらのエントリで申し上げたのは、
企業は、弁護士としての実務経験に期待しているのであって、司法試験に通る頭の良さ・能力を求めているわけじゃない
だから、企業に就職させたいなら、弁護士事務所で修業していただく必要がある
ということでした。
視点は少し違えど、dtkさんと同意見ということです。

今回法務ブロガーの皆さんのご意見を拝読していると、企業内での育成に肯定的な意見が多く同意する部分も少なくなかったものの、大筋この持論は今でも変わりません。詳しくは上記エントリで。


法曹人口を吸収すべきは企業か?

法曹人口の拡大に、企業サイドの法曹人材活用の意欲が追いついてないのではないか?
この問いに対し、意欲という捉えどころのないものを証明するのは難しいのですが、もともと就職口として期待されていた大手企業はそれなりに頑張って雇用してると思いますよ、というのが私の見解。

試しにこんなグラフを作ってみたのでご覧ください。

表 組織内弁護士数の推移(データは日本組織内弁護士協会HPより)
soshikinaibengoshi

法科大学院一期生が卒業しだした2007年からググッと伸びている=頑張って弁護士を採用しているのがお分かり頂けるかと思います。特に、2008年から2009年は景気の落ち込みも激しく、求人数が激減していたわけで、これだけ採用を伸ばしたのはかなりの頑張りだったのではないでしょうか。

パナソニック・日本IBMといった大手や、ゴールドマン・モルガン等外資系金融は以前から複数人単位で採用していましたし、この数年間では特に三菱商事、ヤフー、NHKあたりが採用人数を伸ばしているなど、積極的と言って過言ではないでしょう。

一方で、上記の様なエスタブリッシュな企業ではない、もう少し庶民的な一般企業において弁護士採用ニーズは増えているか・増える見込みがあるかが気になるところ。
私が所属する会社のデータを晒しそうになるところですが・・・ぐっと堪えて(笑)、公になっているハローワークのデータを使って見てみましょう。

ハローワークインターネットサービスで「全国」の「事務的職業」の「正社員」求人を検索すると、1/21時点でその数15,478件。
 うち「法務・知財」求人数 : 124件
 うち弁護士資格を求める求人数: 1件
 (ちなみに司法書士資格を求める求人数: 4件)

同じ条件で「経理」求人を検索すると(ITの発達で相当自動化・スリム化されてきたはずにもかかわらず)3,223件もあったり。ハローワークを使われているような極めて一般的な企業のレベルになると、法務という職業のニーズ自体がこれだけ少ないわけです。一般企業という目線で見た場合には、国家資格に裏打ちされた弁護士どころか、そもそも法務パーソンという職業人自体への期待がそれほど多くないという現実を見ておく必要があるかと思います。

大量採用を期待されていた大手企業は既に一通り期待に応え、一般企業では今既に仕事をされている法務パーソンの置き換え需要+αがせいぜいということになれば、若手弁護士を育成する場所としても、法曹人口を吸収する場所としても、企業の法務部という場がこれ以上の期待には応えるのは難しいんじゃないか、というのが私の意見です。