みなさん、Ustream(通称Ust)という無料のストリーミング動画配信サービスをご存知でしょうか。

iPhone1台(もちろんPCでもok)あれば、世界どこにいてもネットを使って生放送ができてしまうというサービスのこと。
元々は2008年のアメリカ合衆国大統領選挙で候補者達が双方向ディベートをストリーミングしたのがブレイクの始まりで、日本でも、昨日の小沢幹事長の検察任意聴取に対する会見を(地上波がどこも中継しないなかで)このUstを使って中継したことで、メジャーになりそうな感じが漂ってきました。知らなかった皆さんは名前だけでも覚えておくことをおすすめします。

で、私が今ハマっているのが、このUstのサービスを通して、夜な夜な自宅からDJプレイの模様を中継されている人を見ること。

UstでDJしているところを画面で見るとこんな感じ。

s-ustdj2

今何人視聴しているかがわかるだけでなく、画面右側に視聴者のtwitterのつぶやきを表示することもできるので、インタラクティブ性も確保できるというところもUstの特徴です。こんなのが無料というところが凄い。

UstDJの法的問題


ところが、このストリーミングDJという行為は、お察しのとおり著作権法上は真っ黒なわけでして・・・。

クラブでDJするだけであれば、JASRAC管理曲のレコード・CDを掛ける限りにおいて、JASRACのこの手順に従ってお店が申請をし面積・集客に応じたお金を払うことで「上演権・演奏権」の処理がなされ、ほぼ著作権上の問題はクリアになります(著作者の名誉を汚すようなことの無いように曲を利用する「著作者人格権」への配慮も念のためお忘れなく)。

しかし、レコード・CDになっている音源を使ってDJプレイをし、これをインターネットにストリーミング配信で流すということになると、これは上演権・演奏権の問題ではなく
  • 著作者(曲の作曲・作詞者)が持つ楽曲の「公衆送信権」
  • 実演家(曲の演奏者)が持つレコードに収録されている実演の「送信可能化権」
  • レコード製作者(レコード会社)が持つレコードの「送信可能化権」
が働くため、この3者からそれぞれ許諾をもらわなければならないのです。

天下のJASRACも、著作権者の「公衆送信権」をライセンスする権限はあるものの、著作隣接権者の「送信可能化権」までは管理をしていないんですね。
たまに「JASRACに申請を届け出て金を払えばいいじゃん」と言う方がいるんですが、それではライセンスは1/3しかクリアできないわけです。ここがUstDJにおける最大の課題です。

商用配信と割り切れば、公衆送信権はクリアに


ではまず、著作権者の公衆送信権の処理から。

これ、UstDJでお金を頂こうとは思わない限り、非商用配信の申請をお考えになるのだと思います。

ところが、この非商用配信の契約ではこんな落とし穴があることが、しらっとQ&Aに書いてあります。
ストリーム形式の場合、許諾手続き以降も内国曲しか利用しない場合に限り、同規程第7節ビデオグラムの手続きは不要とします。
一方、外国曲を利用する場合、ほとんどの外国曲(洋楽)については、基本使用料(=映像に音付けすることに関する使用料および映像に同調させて録音することに関する使用料)が、JASRACの規定どおりではなく、権利者の言い値になります。
したがって、外国曲を利用する際には、事前に日本で窓口となっている権利者(サブ音楽出版者)に直接お電話していただき、基本使用料額を取り決めたうえで、その額を私共JASRACにお支払いいただくことになります。
がっかりな規定ですが、まあ色んな権利調整の末、こんな例外規定が置かれてしまったようです。

これをなるべく面倒無くクリアするには商用配信の無料提供という考え方でJASRACに利用申請→許諾を得るのが近道っぽい。料金は非商用配信とそれほど変わらないようですが、なんかイマイチな感じなので、JASRACには、権利者側と相談頂いて早期にこの非商用配信の規定の改善をお願いしたいところです。

著作隣接権者の包括許諾を容易に取得できる仕組みが必要


そして、残る著作隣接権である送信可能化権の処理について。

再びJASRACのQ&Aより。
市販のCDを音源としたデータをインターネットラジオで流す
→著作権の手続きの前に、レコード製作者、アーティストなどの著作隣接権について許諾が必要です。ご利用になる楽曲ごとに直接レコード会社へお問い合わせいただき、許諾を得られない場合は、その音源の利用を控えてください。

DJは、役割上たくさんの曲を次々に掛けることが求められます。しかも、その時のお客さんの反応にあわせて曲を変えていくため、どの曲を使うかあらかじめ分かるはずもありません。従い、許諾を一人一人・一社一社からあらかじめ許諾を得ておくというやり方は、あまりにも非現実的です。

なんとかスムースに実演家やレコード製作者から著作隣接権の包括的許諾を得る方法がないものか?探したところ、日本レコード協会と日本芸能実演家団体協議会が06年からネット配信許諾業務を代行しはじめていたのですが、これが完全に放送事業者向けの規約になっていて個人では使えず。きっと個人相手は面倒過ぎて放棄したんでしょう。

と諦めかけていたところ、ネット配信する際の著作隣接権を一元管理する著作権情報集中処理機構なる団体が出来ていることを発見。今年の4月から活動開始とのことなので、ここが個人でのストリーミングの権利処理までを対象にしてくれれば、著作隣接権の問題がすべてクリアになる可能性が出てきました。
著作権情報集中処理機構は音楽著作権管理事業者と利用者の間に立ってコンテンツ流通促進のため権利処理負荷を軽減するための団体であり、著作隣接権の一元化を担う機能はないとのご指摘をtwitter経由で頂きました。あわせて、映像コンテンツの著作隣接権処理に関わる業務の一元化を担う映像コンテンツ権利処理機構が発足予定との情報も頂きました(22:55追記)。

いずれにせよ、これまで権利者側で権利処理を不便なままにしておきながら、権利に基づく差止・損害を主張するようなことはやめて頂きたいですよね。是非この一元管理事業を個人も対象に構築して頂き、1日も早くUstDJを合法的に行えるようにして欲しいところです。

参考:
ストリーミングのDJに著作権処理は必要?(Sound & Recording)
著作隣接権て何ぞや(「ハック」〜インターネットラジオ便乗サイト。〜保存庫〜) 
【本】マルチメディアと著作権?DJ兼ビジネスブロガーな私が「創作者とユーザーが紙一重な時代」の著作権法を考えてみた(企業法務マンサバイバル)