昨日、twitter上で「iPadに対面カメラが付けばテレワークツールとして最強。兼業サラリーマンも増えるんじゃないか。」という自論を展開したところ、いつもtwitterで私のポストをいじって下さる@isologueこと磯崎先生から、
とバッサリ一刀両断されました(泣)。
私としては
- 日本のサラリーマンがいきなり自営になるのは精神的ハードルが高く、ソフトランディングな「働き方の多様化」が必要
- 1つの会社に100%の能力を費やしている人はレア。1人につき30%ずつぐらい余っているはずの能力(労働力)を他に振り向ければ、日本の課題と言われる“人口減”と“労働生産性の低さ”を解決することにもつながる
- 法務パーソンは弁護士法72条の関係で自営(業務請負)にはなれないが、兼業(雇用)であれば自営に近い働き方が可能←弁護士資格取れば?という突っ込みは無しで(笑)
しかし、今の法制度を前提にすると、磯崎先生の言うとおり「ややこしい」ことは否定しようがなく、反論の余地はありません。
試しに、今の法制度化で兼業(副業)するとどれだけ面倒なことになるか、以下まとめてみるとします。
1)労働時間の通算
労働基準法第38条は、労働時間通算の原則を定めています。これは、「色んな会社・事業所でバラバラに働いても、その時間を通算した総労働時間が労基法に定める働かせてもいい時間の上限を超えたらNGですよ」という規定です。
たとえばあなたがA社とB社を兼業したとして、ある1日にA社で6時間→その後B社で4時間=通算10時間労働する場合は、1日の法定労働時間の上限である8時間を超えてしまいます。この場合、36協定を結ばないといけないのは当然、B社としては、4時間しか働かせていないにもかかわらず2時間分の割増賃金を負担しなければならないのです。
お気づきのとおり、これでは兼業する企業間で「法定労働時間のイス取りゲーム」のような理不尽な争いがおこります。
またそれ以前に、労働者の通算労働時間をA社・B社が正確に把握・共有するということ自体が相当困難で現実的ではない、とも言えます。
※この点については昭和23年5月14日付基発769号でも明示されているのですが、労働法の大家菅野先生に言わせると「この規定は同一使用者の2以上の事業場で労働する場合のことであって、労基法は事業場ごとに同法を適用しているために通算規定を設けたのである、と解釈すべき」つまり別会社まで通算しろとは言ってないんじゃない?と主張されていたりもします(菅野『労働法 第八版
2)社会保険
社会保険については、保険の種類ごとに細かく対応が分かれますが、特に労災保険に問題があります。
a)健康保険・厚生年金保険
2つ以上の強制適用事業所に勤務し、いずれの事業所も同一の保険者が管轄している場合は、保険者は各事業所から受ける給与を合算して保険料を計算し、その給与に比例して算出したものを各企業が徴収することになります。また、保険者が異なったり、管轄する都道府県が異なったりする場合は、どちらの保険に加入するかを被保険者が選択して届け出ることになります。
保険料は、社会保険事務所がそれぞれ企業の給与金額に応じて按分しA社にはいくらB社にはいくらと通知します。私は見たことがありませんが、なんでもこの通知には兼業しているため按分しているとの理由が付されてしまうそうで、これによって兼業(副業)していることが人事にバレる可能性も出てきます。
b)雇用保険
兼業(副業)していても、1社のみでの加入になります。
労働時間法制上1週40時間以上働けないこともあって、兼業社全てで加入要件を満たすケースも珍しいかと思いますが、仮に加入要件をすべての企業で満たしても、現実的には本業となる企業でのみ加入することになります。
c)労災保険
それぞれの会社との雇用関係に基づいた適用・給付が行われます。A社に6時間勤務し、その後B社2時間に勤務していたとすると
ア)自宅からA社までの通勤災害 /A社労災適用
イ)A社勤務中の業務災害 /A社労災適用
ウ)A社からB社移動中の通勤災害 /B社労災適用
エ)B社勤務中の業務災害 /B社労災適用
オ)B社から自宅までの通勤災害 /B社労災適用
このうちウ)の「複数就業者の事業場間移動中の通勤災害」が平成18年法改正ではじめて労災として認められるようになったのは一歩前進ですが、それでもなお厳しいのは、B社の対象範囲で災害に遭った場合、休業期間中はB社の平均賃金に基づく休業補償給付しか受けられない点です。上記の例だとトータルの労働時間の6分の2の割合でしか補償されないのに加え、当然A社での収入もなくなるわけで、これはかなりつらいことになります。
3)住民税
上記2)で社会保険料負担額の通知で兼業(副業)がバレる可能性が、と書きましたが、もう一つバレるルートがあります。それが住民税の特別徴収によるものです。
サラリーマンであれば、住民税は会社が給与から天引きして納めていると思います。これを住民税の特別徴収といいます。
この手続きでは企業は、年末調整終了後、従業員の住まいを管轄する区役所に給与支払報告書を郵送します。区役所はこの報告書を元に、翌年のその従業員の住民税額を計算するわけですが、兼業(副業)していると、この時区役所には複数の会社から給与支払報告書が届くことになります。区役所はこの複数届いた報告書の額を合算して翌年の住民税額を計算し、特別徴収を行う本業の企業に「税額決定通知書」を送ります。
そこに書かれた認識のない多額すぎる収入額によって、本業の企業が従業員の兼業(副業)に気付く・・・というわけです。
黙ってバレないように兼業(副業)しようとしても2)のa)および3)によりほぼ不可能ですし、もし会社に兼業(副業)を認める気概があっても、時間管理や社会保険実務に相当の負担が掛かるという現状。
政治的大英断で上記ポイントをシンプルな法制度にリフォームするでもない限り、今のままでは、兼業(副業)がメジャーになる日は来ないでしょうね。うーん、どうにかならないものでしょうか・・・。









