このエントリで伝えたいこと

  • 本は見かけやタイトルによらない。
  • 中国法務の入門書としては、著者の信頼度・構成・内容のわかりやすさ・情報の新しさ・価格の点でこの本が最も優れている。

入門書として破格のコストパフォーマンス

リアル書店の中国ビジネスコーナーの片隅で、ちょっと気になって手に取ったら、こんないい本がこんなところにあった!とビックリした本。

この秀和システムさんの「図解入門ビジネス」シリーズは、普通法律書の棚には絶対入らないと思われるので、法律書という切り口でこういう本を探し求めている法務パーソンには発見できないでしょうし、かといってAmazonの検索で引っかかっても、タイトルの軽さに敬遠されてしまいそう。

中国ビジネス法務の基本がよーくわかる本


しかし、この外見・このタイトルなのに、奥付をよく見ればなんと著者は泣く子も黙る森・濱田松本法律事務所、遠藤弁護士と孫律師のコンビ。どこかのコンサルタントが書いたようないいかげんな法律概説書とは違い、これだけでも信頼性はお墨付きであることが分かります。

まず、(本のわかりやすさを大きく左右する)章立てがすばらしい。

1章・2章で中国の国民性、文化、国家機構、法制度について概説した後、

3章で、以下のような感じで民法、会社法、知財法、そして訴訟法まで、ビジネスに関わる法律について(ところどころ日本法との差異も示しながら)ポイントアウトし、

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物権法の施行により、はじめて売掛金について質権を設定することが可能になりました。中国人民銀行は、2007年9月30日に「売掛金質権設定登記規則」を公布し、売掛金の範囲、登記方法を定めました。
三包責任とは、事業者が商品を提供する場合において、法律規定又は消費者との約定に従い、「修理、交換、返品」を保証する責任を負うことを言います。消費者権益保護法45条1条によると、国の規定または事業者と消費者との約定により三包責任を負う商品については、事業者は修理、返品、交換を行わなければなりません。
中国では「基本的に、1つの会社は、1種類の業務にしか従事できない」という不文律があります。
他人にその登録商標の使用を許諾した場合、ライセンサーは、商標使用許諾契約の締結日から3ヶ月以内に契約の副本を商標局に届け出なければなりません(商標法実施条例43条)。
訴訟時効の期間については、契約であると不法行為であるとを問わず、原則として2年、特別の場合は1年と、非常に短いものとなっています。

4章・5章では、会社設立・貿易・投資(M&A)・技術移転に必要な知識や注意点を総括し、

6章・7章では、3章で紹介した各法律の縦糸を横糸でつなぐように、ビジネス法務という観点での注意ポイント(契約書作成、不動産・国有財産の取引、PL、模倣品対策、司法制度etc)をまとめてくれるという念の入れよう。

さらに2009年12月発行なので、2000〜2008年にかけて激しく改正された中国の法律が、すべて最新の状態で網羅されているのも頼もしい点。

しかも1,600円という低価格。通常の法律書で森濱田の本だったら4、000円台に軽く乗ってしまうところです。

詳細な基本書を読む前に、これを1回読んでおくだけで理解度に差がつくのではと思います。