このエントリで伝えたいこと

  • いつまでも契約書が紙のままで交わされ、電子ファイルで完結できるようにならないのは、中途半端な法と制度設計によるところが大きい。

保管が問題?電子署名が問題?

私のTwitterで電子契約についてつぶやいたこのtweetに、 dtkさんがblogで反応してくださいました。
契約の原本の保存というか、原本も含めての紙からの脱失は、結構難しいのではないかと個人的には思っているのでした。ネックは技術のスピードの速さと書けば、あとは書かずとも分かるかもしれませんが、電子データの保管媒体の進歩の速さと、進歩に対応して媒体を変えるとなると、データの引越を要求されて、手間だけならまだしも、そこには必然的に移行をミスするリスクがあるのとで、結局のところ、紙ベースが一番確実という結果になるのではないかと疑っているからだったりします。契約書を永久保管とかしようと思うと、そういう点を無視できないように思うのです。

私は保管の問題よりも、電子署名が普及してない問題の方が先かなと思っていたのですが、ご指摘のとおり、保管の問題もあるなあ・・・などと、色々な思いが頭を巡ってぐるぐる。

せっかくなので、なぜ紙の契約書が電子契約にならないのか、どうすれば電子契約が当たり前の世界に移行できるのかについて、現状を整理しながら、私なりに少し考えを深めてみたいと思います。

電子契約関連3法を整理する

まず、紙の契約書+押印による契約を電子化する世界を目指すにあたり、関係する法律を整理してみましょう。
  • 「電子署名法」
    電子ファイルに対し電子署名を施せば、手書き署名や押印をした文書と同じ文書として法的効力を持つことになった

  • 「IT書面一括法」
    書面の交付や書面による手続きを義務付けている法律(特定商取引法や建設業法など)を緩和し、電子メールや電子ファイルによる交付や手続きを可能にした

  • 「e-文書法」
    見読性が確保され、タイムスタンプ付与がなされれば、税務的にも電子ファイルでの保存が認められるようになった
これら3つの法律により、現在ではほとんどの契約が電子化できる素地が“法的には”整備されたことになっています。

中途半端な認証制度

それでも、電子契約が普及していないという現実。
この現実を招いている原因は色々あるとは思いますが、私はつまるところ以下2点にまとめられると思っています。

1点目は、「電子証明書」の発行を中途半端に民間に委ねている点です。
電子署名法では、電子ファイルに施す電子署名の真贋を証明するため、認証事業者が発行する「電子証明書」による証明を求めています。この電子証明書は、書面の契約でいえば国(法務局)や地方自治体が発行する実印の印鑑証明書にあたるもの。契約書に施された電子署名が真正なものであることを証明してくれるものです。

s-denshi01※法務省HPより

電子証明書の発行主体(認証事業者)は、法人については「商業登記に基づく電子認証制度」があるので国が担ってくれますが、一般個人については商業登記がないため、国の認定基準に従う民間事業者(セコムや帝国データバンクなど)が担っています。
しかし、国の認定基準が厳し過ぎるあまり、そのコストが電子証明書に転嫁され、ただでさえ利用されていない電子署名がさらに利用しにくくなるという悪循環に陥っています(こちらの文書(PDF)の8ページあたりでも、セコムの方が同じことを指摘してます)。加えて、当該認証事業者がつぶれて電子証明書が継続的に取得できなくなったら・・・という不安も、普及を遅らせているように思います。

2点目は、電子ファイルを税務上の証票として認めるのになぜか「タイムスタンプ」を必須としている点です。

どうして、紙の証票にも求めていないような厳格なタイムスタンプを、すべての電子ファイルに求めるのか。紙は劣化で時の経過がわかるからだとか、電子ファイルは容易に改竄できるからだとか言いますが、紙なら改ざんされないという保証もない中で、当局の発想は理解しがたいものがあります。

もう一度、国主導でシンプルに仕切り直そう

電子契約普及のためには、(実印の印鑑証明がそうであるように)電子証明書の発行業務を国や地方自治体が一手に担うようにすべきです。中途半端に民間に任せることで発生させてきた「国が民間事業者を管理するために発生している不必要な中間コスト」をカットすることで証明コストも低くなるはずですし、国が直接運営することで、電子署名制度自体の信頼性もアップすると思うからです。

あわせて、「e-文書法」で定める税務上の証票に求めるタイムスタンプ要件は思い切って廃止したら、と思います。税収を確実に確保する途は、税制改革の中で別途考えていただければと。

なんだか最後は取り付く島もないような提案になってしまいましたが、インターネットでの契約行為が消費者の購買行動の変化からも当たり前のものになり、企業間においては取引の迅速化と安全性の両立がより求められている今、電子契約への早期移行は喫緊の課題だと考えます。


(参考)

電子署名法の概要と認定制度について(法務省)
 制度概要と認証事業者が一覧できます。

書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律案について(旧通商産業省)
なぜか、いまだに法律“案”のページが唯一のオフィシャルページ。

e-文書法の施行について(首相官邸)
 「電磁的記録で保存を行う際の要件等」が表形式で一覧できます。

電子署名法の解説
岡村久道先生による解説。