電子書籍のリリースを発表してから1週間、各所からお問い合わせを頂いている次第ですが、その中でもダントツに多い質問がこれ。

iPhone/iPod持ってない人は読めないの?

10人以上からこの質問を頂いているうちに、一つの当たり前な事実に気づかされました。

紙の本から電子書籍に変わることで、私のような情報発信者が情報の発信をしやすくなったのと引き換えに、必要な端末を持っていない受信者にとっては情報の受信がしにくくなるのだということに。

“発信者負担”から“受信者負担”へのパラダイム転換

紙の本は誰もが手にでき、専用端末を購入することもなく読むことができます。この誰でも読める紙の本で情報発信するために、これまでは発信者側が出版に関わるコストを負担してきました。

一方、電子書籍の時代では、「iPhoneアプリ」「Amazon Self-Publishサービス」等によって情報の発信者がコスト負担なく電子書籍として情報を発信できるようになった代わりに、これからは受信者がプラットフォームに乗る=端末を入手するコストを負うことになります。

私たちが出版する電子書籍「ITエンジニアのための契約入門」は350円。いくら書籍代が安いとは言え、この電子書籍だけを読みたいだけの人がわざわざiPhoneやiPod Touchのコストを負担するはずもありませんが、いくつか魅力的な電子書籍が増えれば、そのために買う、という人も出てくるのかもしれません。この負担を受信者に強いるようになるところに、大きなパラダイム転換があるのだなあと。

s-iBooksApple公式HPより

もちろん、電子書籍プラットフォーム事業者も、そのことは分かっているはず。だからこそAppleは、iPadにきれいな画面・豊富な機能という付加価値をつけることで、そしてAmazonは、Kindleを情報端末としての機能に絞り込み端末価格をゼロに近づけることで、その情報受信コスト負担を感じさせないようにしようと努力しているわけです。

「本屋」のままのAppleとAmazon、「情報屋」へと脱皮するGoogle

しかし、AppleとAmazonは、まだ大事なことを一つ忘れている気がします。これまで受信者が当たり前のように負担してきた、目に見えないコストの存在をです。

そのコストとは、「必要な情報がどの本の中に書いてあるのかを探すコスト」。

人が本を買って読むのは、その本の中に必要な情報・価値ある情報があると信じているから。そして、どの本に必要な情報・価値ある情報がありそうかを探す手間暇にコストをかけながら、あると思った情報がないリスクも背負って本を購入しています。

iBooksもAmazonも、電子書籍というパッケージを売る「本屋」のサービスです。ユーザーにタイトル・著者名・キーワードといった頼りない情報だけで本を検索させるこのコストとリスクを受信者に負担させるパラダイムから抜けだす気配はありません。

これに対してGoogleは、ご存知のとおりのあの大訴訟を戦いながら、今も世界中の本をスキャンし続け、本の中にある情報をGoogleBooksで全文検索可能にしようとしています。そして、WSJの記事によれば、電子書籍を販売する新サービス“Google Edtions”は、このGoogle Booksとリンクすることがすでに宣言されています。
ユーザーは、必要な情報がどの本の中にあるかを探すとき、Googleの全文検索に頼り、そしてその検索結果画面の横におかれるボタンを、本ではなく情報を買う感覚で押し、Googleから電子書籍を買うことになるのでしょう。Googleは「本屋」ではなく、「情報屋」になるわけです。

端末を中心としたプラットフォームで囲い込むという古典的な方法で戦うのではなく、受信者がこれまで背負ってきた負担を減らすという視点を持ったGoogleこそが、電子書籍プラットフォーム事業者として、いや、“電子情報課金プラットフォーム事業者”としてもっとも有力なプレイヤーとなる気がします。

あ、でも日本の書籍はGoogleBooksの和解対象から外れたちゃったから、仲間外れなんでしたっけ・・・。
Googleブック検索和解修正案提出、日本やEUは実質的に除外