私がフォローするTwittererの中でも、いつも一歩先を行くIT系ニュースをtweetで共有して下さる佐々木俊尚(@sasakitoshinao)さん。この本ではその先見の明をもって、電子書籍という新しいITが、出版と本の文化をどう変えていくのかを、音楽配信の在り方を変えたiPod+iTunesの歴史と対比しながら予測しています。

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)


その佐々木さんの論旨を要約すると、
1)誰もが容易に出版して課金するプラットフォームの誕生により、
  書き手が一気に増え、
2)文字情報が「アンビエント(遍在=どこにでもある・手に入る)」
  なものとなり、
3)読み手は、そのアンビエントな文字情報の中から、自分にとって
  意味のある情報を、ソーシャルネットワークを中心としたコンテ
  クスト(文脈)で抽出するようになる
というもの。

2)や3)は、電子書籍でなくても、すでにブログで実現されてきたことです。しかし、これまでブログで価値ある文字情報をパブリッシュしていた人達は、ある種の自己アピール、もしくはボランティア・プロボノ的発想のいずれかでやられている方がほとんどでしょう。読み手もそれは分かっているので、多少自分勝手なことが書いてあってもスルーするだけだったと思います。

この点、誰もが簡単に課金できる“マイクロマガジン”(←イケダハヤトさんに教えて頂きました)をリリースできるようになったというのは、上記1)でいう書き手にとっての変化、つまりより価値ある情報を書こうとする書き手のインセンティブを高め、しかもその書き手にブログ等に書くのとは異なる責任を発生させる点で、大きなパラダイム転換なのだなあと思うのです。

ITエンジニアのための契約入門』を共著でリリースして今日で1週間。実際に“マイクロマガジン”的なものを出版してみて、同じ文字情報なれどブログで文字情報を発信するときの意識とは全く違うものであることを、私自身実感しています。金を取って出版する以上、書きたいものを書くだけでなく顧客の期待に応えなければという意識が強く持ったのは、ブロガーとしての自分のそれとは明らかに異なっていたと思いますし、読み手の側も、金を出して買った以上値段相応の価値を書き手に対して厳しく求めていらっしゃるということが、如実にフィードバックコメントに現れていました。

セルフパブリッシングと課金が簡単にできるようになることで、ブロガーとは違う読み手を意識した良質な書き手が増加し、厳しい読み手によって書き手が淘汰・成長するスパイラルが形成されていく・・・電子書籍の未来は、ブロガーとは違う書き手の誕生を促進するメディアとして、広がりを見せていくのだろうと確信しています。