全ビジネスパーソン必読。そして全ビジネスパーソンが読み終わった後自問自答すること必至。
『トレードオフ―上質をとるか、手軽をとるか
DVD宅配レンタルで成長著しいネットフリックスの取材で著者が耳にしたアイデア
人々は上質さと手軽さを引き比べてどちらか一方を選ぶにインスピレーションを得て、「“上質”と“手軽”のどちらかに強みを絞って極めれば成功するが、その両方をいいところどりした“幻影”を目指すと、“不毛地帯”に陥って失敗する」という、これまでの経営戦略のセオリーに対する大胆な逆説を提示し、数々のビジネス実例を基にその証明を試みる本。

「“上質”か“手軽”かの二者択一で戦え、どちらかは捨てろ」なんて、随分短絡的なものの見方・言い方だなあと眉に唾しながら読み始めた私も、分析対象として取り上げられている商品・サービスの数々がiPhone・キンドル・Palm・スターバックス・COACH・ティファニー・フェデックス・シンガポール航空etcといった、まさに自分が顧客として体験してきているものばかりだったために、顧客視点で共感できる点が多く、読了時にはもうこのフレームワークのシンパになってしまいました。
しかし、このフレームワークを私たち自身に当てはめた途端、こんな恐ろしい・キツいメッセージに変わってしまうとは・・・。
「理想的な」働き手とは、いわゆる「質の高い」人材である。ところがそういう人材は見つけるのが難しい。つまりは手軽に集めることはできないのだ。たいていは、長い時間をかけて探したり、面接をしたりしないと発掘できない。そのうえ、入社してもらうにも、つなぎとめておくにも、相場よりも高い報酬が必要になる。他方、「現実的な」働き手とは、すぐに勤務を始められる人材である。雇用主が望みそうな技能をすべて備えていなくても、「十分な」見込みがあって、人手不足の折りにすぐに空きポストを埋める人材がいれば、採用する側のマネジャーからもおおむね感謝されるものだ。(P35)
誰もがどこかの分野で上質の頂点をきわめられるわけではない。その場合は手軽さをきわめようとするのが賢明だろう。街で最も腕利きの不動産業者になれないなら、手軽で一番を狙うのだ。テキストメッセージによる問い合わせに即答する。不動産を売却したい人々に気楽に利用してもらうためにあらゆる方策を尽くす。競争に勝つために手数料を下げて手軽度を高める……。とにかく手軽をきわめるために打てる手をすべて打つのだ。(略)
世の中で活躍著しい人々は、上質または手軽のどちらかをきわめているものだ。不毛地帯でくすぶっていたのでは、キャリアの見通しは非常に暗いと言わざるをえない。(P260)
法務パーソンとして、これまでの仕事っぷりが上質じゃなかったとは認めたくありません。でも、ユーザー(雇用主である会社、相談してくれる従業員)が無資格法務パーソンの私に“上質さ”を求めていたのか?と考えると、そこはかなり疑問です。実際に自分が評価されてきた数少ない(笑)シーンを振り返ると、弁護士とは違う“手軽さ”をきわめたところで喜ばれてきたんだろうなあ、正直なところ。
そういえば、ワールドカップサッカーを見ていた方は、田中マルクス闘莉王が「下手は下手なりにやり方がある」と何度も言っていたのを覚えていらっしゃるかもしれませんが、これも同じことを言っていたのでしょう。上質なサッカーを目指すことを捨て、手軽なサッカーに徹したからこそ、強豪とあそこまで戦えたのだと。
私なりの“手軽さ”のきわめ方を、立ち止まって考えてみる必要を感じています。










いきなり揚げ足取りで失礼ですが
「これまでの経営戦略のセオリーに対する大胆な逆説」
という表現がどうしても見過ごせずコメントさせていたきます。
「コストリーダーシップと差別化のトレードオフ」は
経営学では基本中の基本です。
有名なマイケル・ポーターが言いだしっぺですね。
http://president.jp.reuters.com/article/2009/08/27/3F21681C-8713-11DE-BD1C-86B93E99CD51.php