今号のメイン特集とはまったく関係ない記事からヒトネタ。

BUSINESS LAW JOURNAL 2010年 09月号


「経験弁護士の企業出向―法律事務所からの出向アプローチが増える?」というタイトルが付けられた、不景気で若手弁護士のポストが見いだせない事務所側と、弁護士の専門能力を活用したい企業との思惑が合致し、弁護士の企業への出向が増える、という観測記事について。

大手企業と弁護士事務所の間で、顧問弁護士事務所と法務部の人事交流を名目とした弁護士の出向が頻繁に行われているのは周知の事実です。
しかし、この記事の論旨のように、法曹人口過多の解決策として企業への出向という手法を活用し、事務所が少なくない対価を得るということになると、さすがにその「出向」という取り扱いの適法性に疑問が出てくるのでは?と思った次第。

ご存知の方も多いと思いますが、「契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させる」ことは、派遣業の認可を受けて行う労働者派遣を除いては労働者供給にあたります(職業安定法第4条第6項)。この原則に従えば、企業と法律事務所が契約して弁護士を出向させる行為は労働者供給に該当するわけで、経営指導やグループ企業間人事といった建前が通用するシチュエーションであればまだしも、そういった関係のない法人に対して出向させ対価を得る行為は「業として行う」労働者供給に他ならず、職業安定法第44条で禁止された行為になってしまうおそれがあります。

職安法上違法にならないようにするために、事務所が派遣業の許認可を取得し労働者派遣法上の派遣社員として堂々と弁護士を派遣する、という手段が取れればいいのですが、労働者派遣法第4条第1項の派遣禁止業務に「弁護士」が挙げられており(弁護士は、資格者個人がそれぞれ業務の委託を受けて当該業務を行うものであって、当該業務については指揮命令を受けることがないものとされているため)、派遣業者として弁護士を派遣することも違法となります。

弁護士事務所として、弁護士の企業への出向の適法性をどのように理屈付けしていけばいいのでしょうか?法律事務所と企業法務部の人材交流はメリットがあると考えているだけに、合法と主張できるしっかりとした根拠が欲しいところです。