ゼンショーがやってるすき家も、ココスジャパンがやってるエルトリートも好きな私としては、残念なお話。

「代表取締役」と「社長執行役員」どっちがCEO(最高経営責任者)?(ビジネス法務の部屋)
ゼンショーさんの連結子会社であるココスジャパンさん(JASDAQ)のリリースによりますと、収益回復に向けた経営戦略の一環として、代表取締役の交代ならびに社長執行役員の新設を発表しておられます。そして代表取締役にはココスジャパンさんの取締役の方が就任され、新設された社長執行役員には親会社であるゼンショーさんの関係者の方が就任される、とのこと。つまり同じ上場会社に「代表取締役」と「社長執行役員」が別々に就任される、ということのようであります。
やはり株主に対して直接責任を負う方こそ(法律家らしからぬ言い方で恐縮ですが)会社で一番偉い人のように思います。対外的な代表権だけでなく、対内的にも取締役会から包括的な委任を受けた決定権限はまず第一に(社長ではなく)代表取締役にあると思うのでありますが。

以前ライブドア事件の際にも言及したような「取締役でないただの使用人が社長を名乗っても、表見代表取締役として保護されるのか?」という問題は今日はさて置き、この統治機構と経営責任のあり方について、私も山口先生のご意見同様違和感を感じました。歯に衣着せずに言ってしまえば、この決定には欠陥があると思います。それは、すべてのステークホルダーの利害を一元的に背負って立つ者が不在になると考えるからです。

・代表取締役は業務執行をしない
 →顧客・従業員への直接説明責任を負わない
・社長執行役員は株主総会・取締役会に出ない
 →株主への直接説明責任を負わない

このような状況では必然的に、代表取締役は株主の利害を踏まえた判断をし、社長執行役員は顧客・従業員の利害を踏まえた判断をすることになります。結果、株主の利益代表たる代表取締役と顧客・従業員の利益代表たる社長執行役員がいちいち衝突するはずで、それらが相反するような高度な経営判断を正確・迅速に行うことは困難になるのでしょう。

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おそらく、ゼンショー・ココスジャパンは、「業務執行を迅速にするために経営のうちの業務執行の責任のみを分割して社長執行役員に委任したのであって、株主の利害も絡むような高度な経営判断は代表取締役が最終責任を負うのだ」と仰るのでしょうが、経営責任ってそんな簡単に分割できるようなものなのでしょうか。たとえ物理的に出来たように見えても、普段顧客や従業員から遠い場所に居るような代表取締役に、正しい経営判断ができるとはあまり思えません。実際にこの責任二分割体制の下で法務を担うことになったら、反目する2人の間を取り持つ仕事に日々忙殺される予感がします(笑)。

企業の経営・統治とは、全てのステークホルダーの厳しい要望に経営者自身が晒された上で苦しみ悩み抜いた末に判断するプロセスであり、そのプロセスと結果に最終責任を負うのが最高経営責任というものではないかと、私は考えます。