2010年10月1日。日本版Facebookにこの「コネクションサーチ」が実装されたことによって、日本におけるSNSの潮目は変わりました。
私たち日本人も、もういいかげんFacebookを始めた方がいいと思います。

米フェースブックとリクルート、就活サイトで交流機能 (日経新聞)
世界最大の交流サイト(SNS)、米フェースブックはリクルートの就職情報サイト「リクナビ2012」と連携し、大学生の就職活動を支援するサービスを始める。利用者が、大学や志望業界が同じ学生やOBを会員から検索して情報交換しやすいようにする。

アメリカでは大学生の社交ツールとして優秀な学生を取り込み、その学生が社会に出ていくことでネットワークが拡大し、結果的にSNS界を制したFacebook。そのFacebookがリクナビと連携することで、これからの日本を支える社会人予備軍である学生と、その学生達を最も深く知りたいと思っている企業(の採用担当)が流れ出てくる“蛇口”を抑えたわけです。

複数のSNSを使い分けるようなヘビーネットユーザーは限られていますが、採用においてリクナビをまったく使わない学生はいませんし、このソーシャルウェブ時代において採用活動にSNSを活用しない企業もありません。こうして今年以降、学生と採用企業の人事担当者のほぼ全員がFacebookに登録することになった今、この “蛇口”から他のSNSに注がれる水量は、かなり細くなってしまうのかもしれません。一方で日本におけるFacebook人口は、2〜3年もしないうちに爆発するはずです。

s-FB

しかし、Facebookは Twitterと違い、シンプルなデザインに反して複雑な機能をいくつも持ったSNSです。決して敷居は低くありません。登録して初めて Facebookの画面を見たほとんどの方が、この画面の中で何ができるのか・何がすごいのかが分からず面食らうはず。

こんな風になったのは、 Facebookがだんだんとユーザーの声を反映させて機能を拡張してきた(昔から使っている人にとっては、新しい機能が1個1個加わっていただけなのでさほど混乱はない)という背景もあるのですが、仮にそのひとつひとつの機能を解説本を片手に覚えたとしても、使いこなせるようになる気はまったくしないでしょう。なぜなのでしょうか?

それは、Facebookがもつ思想と文化をわかってはじめて、豊富な機能を生かせるようにできているからです。

これまで出版されているFacebookの解説本には、その思想と文化をうまく解説してくれるものがありませんでした。そんな中、ようやく、その思想・文化と使い方をセットで解説してくれる本が出版されました。

Facebookポケットガイド


著者は、カリフォルニア大学バークレー校で経済学の博士課程に在籍する日本人留学生であり、ブログ『経済学101』のオーナー、青木理音さん。

私は青木さんのブログの愛読者でしたが、その青木さんがFacebookの解説本を書いたと聞いたときは、意外な人選だなと驚きました。しかしすぐに、この本を企画した編集者の慧眼はすごいと思いました。というのも、私自身Facebookの真のすごさを意識的に理解できたのが、青木さんが5/20にアップされたこのエントリだったから。
案の定、この本を企画した編集者の方は、このエントリを見たなんとわずか3日後に執筆の依頼を青木さんにかけたそうです(早)。ちなみにちょうどそのころ、私はと言えば同じエントリを見て自分も何かできないかと、当時は英文しかなかったFacebook利用規約を全文日本語化するというアホなことをやってたんですが(笑)。

話はそれましたが、その一番大事なFacebookに流れる思想と文化とは何なのか?そのことが分かり易く語られている一節を引用させていただきます。
写真をオンラインにアップロードしてシェアするためのサービスなら、FlickrでもPicasaでもいいはずです。(略)しかし、写真の共有においてもFacebookは世界最大の規模を持つに至っています。一体、何故、人々は写真をFacebookで共有したがるのでしょう。
その答えはよく大学生の部屋に貼ってある写真やポスターにあります。本書でも何度か紹介しているように、Facebookはもともと学生寮で生まれました。誰もが同じ無個性な場所で生活するなかで、部屋を飾り付けることは重要な自己主張の手段となります。(略)
Facebookには、常にどうやって自分を他者に見せるかというマーケティングの側面があります。そこを見逃すと、Facebookの膨大な数の機能が何のためにあるのか分からなくなってしまいます。

そう、アメリカの大学生が生んだFacebookには、機能の一つ一つにアメリカの大学文化やその寮生活を起点とした思想と文化が刷り込まれており、それを理解しているかいないかがポイントなのです。ITの専門家では決して無い青木さんが著者として起用されたのは、今現在留学しながらそれを一番リアルタイムに体得している日本人だからなのでしょう。

もちろん、難しいことぬきにステップバイステップで使い方が分かるよう、スクリーンショットも豊富に掲載されています。単純に機能を知りたい方にとっても満足できる本になってますのでご安心を。

s-IMG_1461

さて、冒頭ご紹介したコネクションサーチの機能は、この本が発売された直後に発表された機能ということもあり、この本の中には紹介されていません。そして今後も、この本に紹介されていない機能は次々に追加されていくことでしょう。

しかし、恐れることはありません。Facebookの思想と文化さえ体得していれば、どんな機能が追加されようとも、必ずや便利に使いこなせる機能のはずなのですから。