弁護士として企業の法務部に入り込んで仕事をされている「組織内弁護士」が、日常どんなことに問題意識を置いて、どんな水準で仕事をしているのか?

私も企業法務パーソンのはしくれとして、頭の中にある企業法務の視点・ノウハウのようなものを守秘義務を侵さない程度にこのブログやTwitterで公開させていただいているつもりですが、組織内弁護士の方がブログやTwitterなどの世界にお出ましになることは、ほとんどありません。弁護士かつ組織に所属しているという立場を考えれば、自分の業務について喋ることのリスクと、わざわざ世の中に出てアピールするメリットがバランスしないでしょうから、当然と言えば当然です。

ところが先日、そんな貴重な組織内弁護士の視点と業務実態が、きわめてつぶさに書かれた本を見つけてしまいました。

企業法務と組織内弁護士の実務 弁護士専門研修講座企業法務と組織内弁護士の実務 弁護士専門研修講座
販売元:ぎょうせい
(2011-02-08)
販売元:Amazon.co.jp



登場する組織内弁護士は計4名。
・エイベックス所属の木内秀行弁護士
・日興コーディアルに5年在籍され今は独立開業されている竹内朗弁護士
・GS→UBSを経て現在はラッセルインベストメント所属の西和伸弁護士
・NHK所属、現在NY大学ロースクールに客員研究員として派遣されている梅田康宏弁護士

こんな一流企業で組織内弁護士経験をもつ方々が、契約書審査、不祥事危機管理、守秘義務、インサイダー取引、放送コンテンツの著作権、事業アウトソーシングなどのテーマについて、実例やケーススタディを用いながら、日ごろどのように業務に取り組まれているかを公開してくださっているのがこの本。

上記の一つ一つのテーマについてここでご紹介しているとキリがないくらい含蓄があるので、また日を改めて個別に記事を書いてみたいと思っていますが、例えば私が4月から追いかけようと思っているテーマであるLPO(Legal Process Outsourcing)、つまり法務のアウトソーシング化に関して、エイベックスの木内弁護士がこんなことを仰っていたのでそのさわりだけご紹介。

企業が自前で契約書を作るといっても、法務部門のリソース、ノウハウ、能力に限度があって自前で契約書をつくれない場合もあります。(略)そういったときには、そのような案件を担当できる専門性を有する法律事務所に頼むことになります。
英文契約を依頼する際にも、別に我々は、英語が苦手だからというふうな観点で投げるだけではないのです。法務部門の中には、英語が達者な人もいます。英文契約はもう死ぬほど作りましたという人もいます。ただ、そういう人でもカバーできないのが、外国の法律です。
どうしても外国との取引が関連してくる契約だと、これは、外国法にも通暁している外部事務所になげなくちゃならないというふうに思います。

これを語っている木内弁護士自身は、ペンシルヴェニア大学LL.Mを修了されニューヨーク州弁護士登録もされているエリート弁護士です。そんなエリート組織内弁護士をして、「すべてを自社で賄えるわけではないし、他にアウトソースすべき場合もでてくる」と言わしめる現実。この現実を直視したとき、企業法務部とは、そして企業内(無資格)法務パーソンとはどうあるべきか?という問題は、そろそろ真剣に考えるべきタイミングに来ていると思っています。うーん、まさに『企業法務マンサバイバル』!(笑い事じゃない)。この話は長くなるので、またエントリを改めて書きます。

東京弁護士会の専門研修講座、つまり弁護士向けに講演された内容を収録したものであり、従って体系的な構成にはなっていません。しかしそれを割り引いても、普段世の中には出てこない本当のプロである弁護士から見た世の中の法務業務の実態情報が満載という点で、貴重な本だと思います。


2011.3.11追記
Twitterで梅田先生から「NHKは辞めたわけでなく1年限定でNYに派遣されているだけ」とのご指摘をいただきましたので訂正いたしました。大変申し訳ございませんでした。