これは文句なしの名著。


クラウドと法 (KINZAIバリュー叢書)クラウドと法 (KINZAIバリュー叢書)
著者:近藤 浩
販売元:金融財政事情研究会
(2011-10)
販売元:Amazon.co.jp



書店で活字の大きさと広めの行間を見、やわらかい筆致の第1章をさらっと読んだ限りで、「ライトな感じでクラウドまわりの法律知識を概観できる本かな〜、まあなんか1つや2つは得ることもあるだろう。」ぐらいの期待で購入したのは、失礼極まりない態度でありました。

クラウドを導入・利用することの取締役としての内部統制上の責任論に始まり、セキュリティ・個人情報保護法、米国愛国者法などの外国法、裁判管轄と準拠法(eディスカバリ含む)、著作権など幅広い法的リスクをかつやさしい言葉で解説した上で、

最終章では、反対にクラウドを提供する事業者の立場から守るべき法としての電気通信事業法、プライバシー権、プロバイダー責任、警察機関や弁護士紹介等情報開示依頼への協力義務・・・と、要所要所で代表判例にも触れたりしながら、細かい所には突っ込み過ぎない程度にまんべんなくクラウドにまつわる法的課題を紹介しています。

これまで出版されてきたクラウド法の本は、そのほとんどが情報セキュリティリスクをどう捉えて処理するかという話題に終始しており、その他の知財リスク・国際法リスク・業法リスク等はオマケ程度の解説にとどまっていました。しかし、いまやクラウドに関しては法務パーソンのみなさんが「セキュリティリスクはもう分かった。むしろそれ以外で、法務パーソンが気付きにくい・忘れがちなリスクがもっとあるんじゃないの?」という不安を抱えている状態だと思います。この本は、その「セキュリティ以外のクラウドリスクいろいろ」に対する不安をもきれいに解消してくれる本なのです。

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特に圧巻だったのは、国境をまたいだサービスの法的ややこしさと恐ろしさについて、丁寧に噛み砕いて説明してくださっているP117-153の第6章。東京青山・青木・狛法律事務所でクロスボーダー案件のトップを担うパートナー弁護士の近藤先生が著者だからこその、この本の一番の読みどころです。私がクラウドリスクの中で一番回避しようがない重たいリスクと思っているのがこれなのですが、国際私法の基礎から説明していたら1日かけても理解してもらえないであろうこのテーマを、法務の心得があまりない経営者(笑)の方でも一読して十分に理解できる内容にまとめています。特にIT系の経営者の方にはぜひお読みいただいて、まずご自身がコトの重大性を理解頂いた上で、クラウド商売を展開していただきたいなあと。

それにしても、“本当に分かっている人”が、敢えて重要でないところを端折って書いてくださると、あれだけ複雑で捉えどころの難しいクラウドリスクもこんなにすっきりと、文字数少なく整理できるんですね!感動しました。

これで1,800円、安いなあ。