レクシスネクシス・ジャパン株式会社様より献本頂きました。ありがとうございます。


暴力団排除条例ガイドブック (BUSINESS LAW JOURNAL BOOKS)暴力団排除条例ガイドブック (BUSINESS LAW JOURNAL BOOKS)
著者:大井哲也
販売元:レクシスネクシス・ジャパン株式会社
(2011-12-22)
販売元:Amazon.co.jp



この暴排分野の専門書としては、商事法務からかなりカッチリとした2分冊がタイムリーに出版されていますから、各社法務部門においてもそちらを蔵書されていることでしょう。加えて、カタチだけの暴排条項を入れることになんの意味があるのか?という、行き過ぎた反応への批判・疑問がささやかれ始めているテーマでもあります(実際私もそう思うところはあります)。そんなこんなで、「暴排はもういいよ、お腹いっぱい!」感もあろうかと思いますが、それでも3冊目として購入する価値が十分ある本だと思い、この本をお薦めする次第です。

なんと言っても、お決まりの暴排指針・条例の解説をばっさりと端折るその態度がとても気に入りました。(巻末資料として各都道府県の条例のポイントをまとめたものは付いていますが、)企業にとって暴排の難しさ・課題は、条文の内容や解釈にあるのではなく、新規取引審査における暴排チェックフローの導入/反社データベースの構築/反社勢力との取引の遮断等々の実務を、どう現場業務に埋め込んでいくかという現実との接続部分にあるということを意識した構成・筆致で徹底されており、すでに刊行されている他書とは違うのだという意気込みがはっきりと現れています。結果として、商事法務の2冊とかぶる部分も少なくなり、補完し合う関係になっていると思います。

現実を考えた場合、実務で困るであろうことと言えば、反社勢力と分かった・疑わしい相手との取引をどう拒絶するかがまっ先に挙げられます。この本は、その拒絶の実務について1つの章(P157ー203)を費やしてしっかりと解説されています。拒絶した際の相手方の反応として予想される行為類型(大声を出して脅迫する、文書を破る、殴る等)に対する実務的な対応トークスクリプトや、いざというときに適用される刑法・条例一覧なんかもあって、至れり尽くせり感は半端ありません。

こう書くと冗談めかしたような言い方に聞こえるかもしれませんが、まだ反社という言葉がこんなにメジャーになる前のこと、契約締結直後に入った情報で「これは反社勢力だ」と確信した取引先との取引を拒絶させるべく従業員を“お断りアポ”に差し向けた際、ベテラン従業員に対しその場でコップの水をぶちまけられるという苦い(というか大変申し訳ない)経験を実際にしたこともあり、この手の話が冗談では済まされないと思っているからこそ、こういったアドバイスの有り難さが身に沁みるのです。
あの時の私は、「何があっても冷静に、こちらが感情的にならないことを第一に、ひたすら審査部門を悪者にして拒絶し切ってください」とアドバイスするのが精一杯で、「何かあったらこういうセリフで受身をとって」とか、「あなたが受けた被害はこういう法律で反撃ができる」というような武器を現場に与えることができてこそ実務だと、今は反省することばかりです。

反社対応というのは本当に一筋縄では行かないテーマだけに、その前線に立つ現場を支える本当に使える実務を身につけて提供する義務が、我々のようなスタッフ部門にはあると思います。