報道と株式市場を賑わしているコンプリートガチャ規制の行く末については、二転三転の挙句、結局消費者庁が景表法適用に動くとの流れになっているようですが、コンプリートガチャそのものの違法性判断はさておき、特に消費者庁に対して申し述べておきたいことがあります。

コンプガチャは違法懸賞、消費者庁が中止要請へ(Yomiuri Online)
携帯電話で遊べる「グリー」や「モバゲー」などのソーシャルゲームの高額課金問題をめぐり、消費者庁は、特定のカードをそろえると希少アイテムが当たる「コンプリート(コンプ)ガチャ」と呼ばれる商法について景品表示法で禁じる懸賞に当たると判断、近く見解を公表する。

同庁は業界団体を通じ、ゲーム会社にこの手法を中止するよう要請し、会社側が応じない場合は、景表法の措置命令を出す方針。

“コンプリートガチャ” 指針作成へ(NHK NEWSWEB)
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料金を払ってくじ引きのようにして得たアイテムをそろえて、より珍しいアイテムを得る手法を巡り、消費者庁は「景品表示法で禁止されている手法に該当する可能性がある」として、ガイドラインを作って事業者に注意を呼びかける考えを示しました。
これは、松原消費者担当大臣が、8日の閣議のあとの会見で明らかにしたものです。
「ソーシャルゲーム」の中には、ゲームで使うアイテムを有料のくじ引きによって手に入れるものがあります。松原大臣は、このうち異なる複数のアイテムをそろえると、より珍しいアイテムが得られる「コンプリートガチャ」と呼ばれる手法について、「一般論だが、景品表示法で禁止されている『カード合わせ』という手法に該当する可能性がある」と述べました。

このような、昔から存在する景品表示法を根拠に規制するならば、消費者庁にはなぜ1年超にわたり放置したのか、なぜ今になって指導をはじめるのかを、今後の行政指導の濫用を防ぐためにもはっきりと言葉にしていただきたいということ、あわせて、行政指導はあくまでも行政手続法にしたがって適切に行なっていただきたいということです。

「産業の育成を阻むような国・法律の規制はすべきではない」というような大上段に構えたことを申し上げるつもりはありません。そもそも、自由主義経済が原則とはいえ、規制がまったくかからないサービス業というのは実に少ない(というかほとんどない)もの。私自身、図らずも通信・放送サービス業と人材サービス業という、ガチガチの許認可事業に身を置き、時にお役所の顔色を伺いながら、法務・コンプライアンスに携わってきました。少し外れたことをすればあーでもないこーでもないと昔の事例を引き合いに出して出来ない理由を並べ立てて、指導をちらつかせてくるお役所という存在との付き合いは、大きな企業にとってある種の宿命です。とはいえ、あまりに指導がきついのももちろん考え物で、特に許認可ビジネスでは行政指導に従わなかっために認可取り消しが出されてしまうと、少なくとも一定期間は強制的にビジネスができなくなり顧客の信頼を失いかなりの痛手になるため、めったなことが無い限りは行政指導には従っておこう、ということになりがち。このあたりの行政指導に関する問題点は、いまや絶版となってしまった新藤宗幸著『行政指導 ―官庁と業界のあいだ―』に詳しいです。


行政指導―官庁と業界のあいだ (岩波新書)行政指導―官庁と業界のあいだ (岩波新書)
著者:新藤 宗幸
販売元:岩波書店
(1992-03-19)
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3年前に消費者庁ができるという話になった際に、消費者保護という大義名分を楯になんでもありな組織にならなければいいなあ、という懸念を当時ブログにも書き記していたところですが、実際にこのような恣意的な指導をちらつかされると、ああやっぱりか、と恐怖は深まるばかり。

「コンプガチャに対する行政指導は今に始まったことではないはず、水面下で指導が入っていたのを事業者側が無視し続けたのだろう」という声も聞かれます。もちろん、ヒアリングと称した「耳打ち」の類はあったかもしれません。しかし、行政手続法上は
(複数の者を対象とする行政指導)
第三十六条  同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときは、行政機関は、あらかじめ、事案に応じ、行政指導指針を定め、かつ、行政上特別の支障がない限り、これを公表しなければならない。
とあり、これまでGREE/DeNAいずれかだけに指導を入れたとは思えませんし、公表された事実もない以上、少なくとも公式な行政指導はなかったものと思います。後半の「行政指導指針を定め」にあたるものが、上記記事引用松原大臣会見の言う「ガイドライン」に相当するのかもしれません。

上記以外にも、行政手続法には行政指導の精神・踏むべきステップ・タイミングについて細かく言及されています。そういったものをすべてすっ飛ばし、決算発表という重要なタイミングの直前、しかもGW中に読売にすっぱ抜かせるというある種“ショッキング”なやり方で、1年あまりも放置した事案について性急に規制に踏み込もうとする消費者庁のこの動きは、少し乱暴に過ぎると言わざるを得ません。GREEをはじめとする関係企業の皆さんには是非、後々別事案で消費者庁にいいようにされないためにも、(コンプガチャの違法性に対する判断はさておき)今回の行政指導のあり方について、行政手続法等を根拠にしてしっかりと反論をしておいていただきたいなと思います。