先日、この本の著者である荻野さんにとある席でご一緒する機会に恵まれた際に、“兼業サラリーマン”にチャレンジしている旨をお話したところ、「まさに社会実験ですね。応援しております。」とご丁寧にお手紙を添えてわざわざこの本を献本いただきました。ありがとうございます。


ダブルキャリア―新しい生き方の提案 (生活人新書)ダブルキャリア―新しい生き方の提案 (生活人新書)
著者:荻野 進介
販売元:日本放送出版協会
(2007-07)
販売元:Amazon.co.jp



この本にいう“ダブルキャリア”とは、あくまでサラリーマンとしての本業を大切にしながら、キャリアを緩やかに広げていくために副業というかたちでステップを刻んでいく、という働き方の提案。実際にダブルキャリアを実践している方々のインタビューを足がかりに、法律的な問題点と解決策、経営者・人事目線を踏まえた将来展望までを描き、かつそのメリットの方に光を当てた筆致になっているところが特徴。

ずいぶん前にこのブログで紹介させていただいた本『ハイブリッドワーカー』も、本業を持ちながらクリエイティブな副業を持っている方々を数多く取材する本でしたが、あちらがその両立の難しさ・厳しさ・デメリットを生々しく描いていたのとは対象的な感じがします。

その『ハイブリッドワーカー』をとりあげ、(今は塀の中にいらっしゃる)堀江貴文さんのコメントとあわせてこんなポストを書いていたのが、丁度今から2年前。

兼業成功者のインタビューに見た兼業の現実
今いる会社(人材サービス業)に入ってこの数年間、長期雇用という安定と引き換えに1つの会社に束縛される「サラリーマン」という働き方をなんとか変えられないかと考えてきた私。

その一つの選択肢として結構最近まで有力候補にしていたのが、「兼業雇用をもっとメジャーにして、1つの会社に依存しないスキルと収入源を得られるようにし、ゆるやかに雇用の流動化を図っていく」というシナリオでした。

当時人材サービス業の中の人として、この“兼業”コンセプトを事業化して世の中のサラリーマンの働き方が変えられないかと企画書をいろんな角度から出して役員との面接に望んでみたものの、「時代の流れは捉えているように思うが、そこに市場が存在することを証明してくれないと、採用はできない」とボツり続けていたのがこの2010年頃。

そして「市場がないというならば、せめて自分自身だけでもやってみよう」と思い立って4月からチャレンジを始めているわけですが、1ヶ月やってみて今痛感しているのが、市場がないというのはやっぱり事実だなということ。そしてその市場拡大を妨げるボトルネックとして立ちはだかっているのが、就業規則における兼業・副業禁止規定の存在です。この本のP152以降にも、その実態が企業人事責任者へのインタビューとともに描かれているとおり、少し古いデータですが「雇用者の副業に関する調査研究」(独立行政法人労働政策研究・研修機構)の調査においては、全面禁止と何らかの条件付きの企業をあわせ80%を超える企業が副業を制限しており、しかも、近年になって制限をする企業はむしろ増える傾向にあります。

fukugyou


しばらくその企業の中にいて信頼関係ができている従業員がなし崩し的に副業を認めてもらうことはありえても、入社前から兼業を公言する候補者を受け入れるとなると話は別。一人の候補者の”実験的採用”のために、現在進行形で全社員に適用している就業規則をおいそれと変えるわけにはいかず、人事はそんな手間やリスクを乗り越えてまで採用しようと行動はしてくれません。私自身、知人経由で私の採用を前向きに検討いただいても、人事のところでお話にならなくなるケースがほとんどでした。そんな中で私は運良く理解を示してくださる数少ない企業と出会い、ダブルキャリアをスタートすることができ、トリプル・クアドラプルキャリアを目指すべく目下営業活動中ですが、この風向きが変わるのには少なくともあと5年は掛かるのではと予想します。兼業サラリーマン市場は、飛び込むにはまだまだリスクばかりが大きいというのが、現時点での偽らざる所感です。

もし私のような兼業志向をお持ちの方は、まさにこの本で提唱されている、あくまで本業を大切にした「ダブルキャリア」に今は留めておくことをお勧めします。そして、そういった方が一人でも多く生まれ業績的にも成果を出されることが、企業の猜疑心を解き、副業そして兼業が広く認められていくきっかけになるのではと期待しています。