“クラウドホスティング”を標榜するファーストサーバ社において、webサーバーとそのバックアップサーバーに保存されていたデータが全て消失するという事故が発生しました。

以下ファーストサーバ社のHPより。

大規模障害の概要と原因について(中間報告)

FSjiko

この絵に書かれた原因 銑をみると、ファーストサーバさんの管理体制に不備・過失があったことを自ら認めているようですね。

このファーストサーバさんの事故に適用される同社利用規約の法的論点とその評価については、伊藤雅浩弁護士が分かりやすく解説してくださっているのでそちらでぜひご確認いただきたいのですが、結論としては、同社の利用規約において、ユーザー自身がバックアップをとっておく責任が課され、かつ「契約者が当社に本サービスの対価として支払った総額を限度額として賠償責任を負う」旨規定され事実上完全免責されている以上、責任追及は難しいのではと(ただし法人間の責任であって、消費者については消費者契約法で免責範囲は限定されます)。


それはそれとして今回の事故で気になったのは、「レンタルサーバーやクラウドのようなサービスがいまだ法律上想定されておらず、したがって利用規約の定めるところで紛争を解決するしかない」という点です。具体的には、比較的近しい事態を想定して立法されたはずの寄託契約などの法律上の規定が、これだけ世に広まっているwebサービスにおいてまったく役にたたないというのは、そろそろ異常な事態かもしれないなと。

例えば、商法において寄託契約の性質を規定した規定にこんなものがあるのですが、

商法第594条
1.旅店、飲食店、浴場其他客ノ来集ヲ目的トスル場屋ノ主人ハ客ヨリ寄託ヲ受ケタル物品ノ滅失又ハ毀損ニ付キ其不可抗力ニ因リタルコトヲ証明スルニ非サレハ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス
2.客カ特ニ寄託セサル物品ト雖モ場屋中ニ携帯シタル物品カ場屋ノ主人又ハ其使用人ノ不注意ニ因リテ滅失又ハ毀損シタルトキハ場屋ノ主人ハ損害賠償ノ責ニ任ス
3.客ノ携帯品ニ付キ責任ヲ負ハサル旨ヲ告示シタルトキト雖モ場屋ノ主人ハ前二項ノ責任ヲ免ルルコトヲ得ス

仮に「場屋」をクラウド・「客ノ携帯品」を自己バックアップ前提のデータと読み替えると、3項は「あなたがお持ち込みのデータに関しては、責任を負いませんよ」とクラウド側が告げていても、クラウド側の不注意によって発生したデータの事故であれば、一方的に免責はできませんよ、という強行規定のようにも読めます。今回のファーストサーバのユーザーの感情的には「そうだそうだ」と言いたくなる規定でしょう。しかし、 法律が守ろうとしていること(その場の安全を管理すべき管理者の不注意による事故であれば、免責はできない)の発想は同じでも、「場屋」で想定されているものがあまりにも古かったり、データが「物」でないという古風な作りによって、こういった商法の寄託契約に関する規定は、今回の事件において役にたちません。かつて刑法において電気の盗み取りが「物」の窃盗にあたるかどうかで論争が巻き起こったあげく、法改正がされたという歴史を思い出させますね。

民法を乱暴に大改正して利用規約全般を規制しようとしている某元法律学者さんがいらっしゃったかとお思いますが(笑)、こういうところを丁寧に現代に通用するように改正したほうが世の中のためになるのではないかと。いや、Doblogさんの事故もしかり、こういった事故が立て続けに起きるようですと、もしかしたら今度は商法学者さんの中からそういう議論が起きるのかもしれませんが。