Dropboxさんが、初期に有料登録したユーザーを永久無料にするというサービスをはじめて、話題になっています。

Dropbox が初期からの有料プラン利用者に感謝、永久無料化
値段据え置きで容量2倍に値下げしたばかりの Dropbox が、古くからの有料プラン利用者に「今後課金しない」という斬新な方法で感謝の意を伝えているようです。かつて用意されていた25GBプランの利用者に届いたのは、有料プランを長年使ってくれたことに対して、現在のアカウントを今後無料で提供すると伝えるメール。
文面ではわざわざ「但し書きなし、引っかけなし。現在のDropboxアカウントについて、もう請求を受けることはありません。永久にあなたのものです」と念押しまでしています。Dropboxはこの対応について公にアナウンスしていないため、厳密にどのような条件のユーザーに届いているのかは不明。メールでの表現は「one of the earliest Dropbox users on the block.」。一方、「最初の1000ユーザーのひとりだったので50GB無料になった」といった声もあります。


ナイスサプライズ!という感じですが、このニュースを見て生粋の悪知恵マン、じゃなかった(笑)、生粋の法務企画マンである私にふとアイデアが。

Dropboxのように、後で突然無料にしてサプライズ!もいいけれど、最初っからそういう契約条件でアーリーアダプターになるインセンティブを与える契約にすることが、何か法に触れるだろうか?つまり、

 総有料会員数が1,000名に達したら、先着10番目の有料会員まで月額会費永久無料
 総有料会員数が10,000名に達したら、先着100番目の有料会員まで月額会費永久無料
 総有料会員数が100,000名に達したら・・・

という契約・利用規約でウェブサービスを展開したら、それは違法なのだろうか?と。

s-Dropbox


法務パーソンの検討プロセス


パッと思いつく限り、法律の規制としては
1)特定商取引法の連鎖販売取引規制
2)景品表示法の表示規制
ぐらいしかなさそう、とカンを働かせました。しかし、いわゆるマルチ商法を規制する1については、ユーザーに他のユーザーの勧誘をさせない(そのようなインセンティブを与えない)限りは気にする必要はないでしょうから、本丸は、2の景表法対策であろうと。

早速私が持つ広告表示まわりの本、および消費者庁ウェブサイトにまとめられたガイドライン・運用基準をチェックしましたが、該当するとすれば、
A)景品表示規制
B)不当表示規制
の2点。

このうち、Aの景品表示規制について、まず景品規制は、
(1)一般懸賞に関するもの,
(2)共同懸賞に関するもの,
(3)総付景品に関するものがあるものの
の3つがありますが。(1)(2)については、契約条件であってくじ等の偶然性,特定行為の優劣等によって無料にするわけではないので問題なし。(3)については、「先着」と聞くと、総付景品規制にかかりそうですが、先着◯名まで全員に景品・割引等のメリットを与えるわけでは無い点、総付規制にはかからない。従って規制対象外であろう、と考えました。

一方、Bの不当表示規制については、コンプガチャ規制やステマ規制でも話題になり最近改正されて規制範囲が広がったかのように見える『インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項』の存在が気になるところですが、その中を見てみると、唯一気になるのがフリーミアムモデルに関する言及。

フリーミアムのビジネスモデルを採用する事業者が、まず大きな顧客基盤を確保するための顧客誘引手段として、サービスが無料で利用できることをことさらに強調する表示を行うことが考えられる。そのような表示により、例えば、実際には付加的なサービスを利用するためには利用料の支払いが必要であるにもかかわらず、付加的なサービスも含めて無料で利用できるとの誤認を一般消費者に与える場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる。

この点、フリーミアムと違って当初はきちんと課金するのをある一定条件で無料にしてさしあげるだけなので、自分が何番目の登録者なのかをカウンターや申込み画面で確認ができれば、欺罔性や誤認のおそれはないものと考えました。

消費者庁に問い合わせてみた


本当は弁護士さんに確認をしようかと思ったのですが、弁護士さんがOKでも、こと景表法となるとコンプガチャの件もあり、消費者庁のゴキゲンが気になる所です。行政庁にあまり気を使いすぎるのは本意ではありませんが、この時期なので素直な気持ちで問合せをしてみました。対応くださったのはもちろん表示対策課。

なぜか事業者名をしつこく確認されましたが、上記の見解をざっと申し述べたところ、(予想通り)申込み時にカウンターをつけるのか?定額なのか?課金タイミングは?いくらぐらいを想定しているのか?・・・とビジネスモデルを細かく聞かれた上で、

「ちょっと・・・この相談は初のケースですねぇ。検討させてください」

と、折り返し検討モードに。

お、初ということはやっぱり規制根拠がないんじゃないかな〜と思ったのですが、1時間ぐらいして頂いた折り返しの回答が以下。

(見解1)
総登録者が10,000人に達する保証が無い段階で、「一般懸賞」に該当すると考える。
→一般懸賞は一般懸賞における景品類の限度額により、総額および最高額に限度があるので、その範囲内での無料化しかできず、青天井の「永久無料」は違法となる(逆に言えば範囲内まで無料、は合法)。
(見解2)
“御社の実績”や“業界の通常の水準”等に照らし、10,000人も本当に集まるのかどうかが疑問。
→登録を煽るためにありえもしない登録者数を表示であれば、有利誤認として不当表示規制に該当する可能性がある。

という回答。つまり、一般懸賞規制と不当表示規制を守らないと違法ですよ、ということでした。

うーん、とは言え、見解1については、消費者庁の表示対策解説ページの例示にもなく、明文上も規制根拠としては明確ではないので、まだまだ争う余地がありそうな気がします。
見解2にいたっては、ウェブサービスでは10,000人、100,000人の有料会員なんてありえなくもないでしょう。下品にならないように100人刻みでもいいんですけどね。ただ、こちらは欺罔性のないように配慮すれば、クリアできそうです。

このビジネスモデル・契約形態に名前をつけるとしたら「逆フリーミアム」モデルかなと思っていますが、よかったら、これどなたか詰めて考えてやりませんか?