3月に辞めますと言ってみたり、そうかと思えば4月からは兼業にチャレンジしてみたり、(本人的には結構計画的にことをすすめているものの)いつも突然の展開で恐縮ですが、実はこのたび、エンタテインメント法務の世界へと足を踏み入れることを決心しました。なので今日は、こんな本を取り上げてみます。


エンタテインメント法への招待エンタテインメント法への招待
販売元:ミネルヴァ書房
(2011-04-16)
販売元:Amazon.co.jp



“エンタテインメント”という業界を指す言葉は、意外なほど法律書のタイトルに使われています。『エンターテインメント法』とか『エンターテインメントビジネスの法律実務』とか『エンタテインメントと著作権 映画・ゲームビジネスの著作権』とか。これが意味するのは、それだけエンタメ業界が幅広い法律にまたがった課題を持つ、取り組みがいのあるやっかいで複雑な業界だということでしょう。

試しに、この本で取り上げられているエンタテインメント法と呼ばれる法分野を分解してみると、
・映像/曲/キャラクターを商品化するための著作権・商標権・パブリシティ権等知的財産権各法
・多数の権利者・契約当事者を巻き込んでプロジェクトを進めるための契約法
・当たるも八卦当たらぬも八卦の世界で資金調達するための会社法・金融商品取引法・各種組合法
・芸能人と切っても切れない肖像権・プライバシー権等を守る憲法
・青少年を有害なコンテンツから守る出会い系規制法・青少年ネット規制法
・国境のないコンテンツが生む紛争解決のための国際私法
・etc…
と、こんなに沢山。

しかも法律にまつわる独特の慣習も多いのがこの業界の厄介なところ。そんな業界の慣習が国内・国外問わず描かれたコラムがこの本の読みどころだったりします。

コラム 権利クリアランスの一例 ― 脚本チェック
映画の製作, 上映等に法的な問題がないかを確認する作業, いわゆる権利クリアランス(Clearance)は様々な形で行われるが, そのうちの一つである脚本のチェックは(Script Clearance)は, 通常, 制作開始前にインハウス・ローヤーによって行われる. 例えば, 脚本がフィクションであろうがなかろうが, 使用許諾のある場合や歴史上の人物を取り扱う場合を除き, 登場人物が現実に存在する人の名前, 顔, 容姿等を連想させることは許されない. 必要とあれば電話帳等を使って, 舞台となる地域に登場人物と合致または極めて類似する人名が存在しないかを確認し, この種の調査を専門的に手がける業者に依頼することもある. 調査の結果, 問題があると判断された場合, 脚本を修正することも辞さない. 彼らの合言葉は, 「疑わしければ削れ」である.
コラム デモ・ショッピング
音楽業界では, 新人アーティストの代わりに, デモ・テープを通じてレコード会社等に売り込むこと(Demo Shopping)を専門とするトランザクション・ロイヤーがいる(殆どの場合、固定費プラス成功報酬で仕事を受けている). .劵奪箸靴審擽覆後々、剽窃されたものであるとして訴えられることを避けたいという法的要請から, また日々送られてくる膨大なデモテープをある程度選別したいというビジネス的要請から, アメリカの大手レコード会社の多くは, 了解なく送られてきたインディーズ系のデモ・テープを視聴しないという厳格なポリシーを掲げている. 結果として, 信頼できるエージェントや弁護士から送られてきたデモ・テープでなければ, 試聴しないという独特の業界慣行が生み出されたのだ(なお、同様の理由により, 映画・テレビ業界のプロデューサーや制作会社も, 信頼できる弁護士やエージェントから持ち込まれた脚本でない限り, 目を通さないという傾向がある).


複合する法律の難しさに加え、このような映画・音楽・ゲームといった業界それぞれに特有の慣習、さらには下写真のようにJASRAC・音事協・芸団協などの権利管理団体の存在等が複雑にからまって、数年勉強した程度では理解できない業界。だからこそ「エンタメといえば福井健策先生」みたいな、一部の先生にお仕事と人気が集中する構造もあるような気がします。

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2010年以降の研究対象として据えてきたプライバシーというキーワードから、スマホアプリを扱う企業の選考にオジャマし、話を聞いているうちにすっかりその事業モデルに共感してしまい、この奥深いエンタテインメントの世界に足を踏み入れようとしている私。その昔衛星放送・通信メディア企業にいたとはいえ、これまで吸収はすれど活用しきれていなかった法律知識をフル活用しなければやっていけない世界に飛び込むのだということを実感し、ちょっと先の入社日が待ち遠しくもあり緊張でもあります。

どんなドメインで具体的にどんな仕事をするか、そして今までのお仕事をどうしていくのかは、また入社の時期が近づいた頃にでも。