とある会社の方が、「スマートフォンでは、ゲームのダウンロード数や利用回数は、そのアプリのアイコンの出来だけでも大きく変わる。PCの時代のデスクトップに並ぶアイコン以上に、スマホアプリのアイコンデザインには気を使っている」という趣旨のことを仰っていて、なるほどな〜と感心していたのですが、さて、アプリのアイコンがそれだけで売れ行きを左右するほどの威力を持つのなら、なにかしら権利化しておかないとまずいのでは、でも、できるんだっけ?という疑問が。

絵柄なので、例によって「思想又は感情を創作的に表現したものであって〜」の要件を満たせば当然に著作権は働くはずですが、商標権とか意匠権でも保護できたりするのかな?と。

スマホアプリのアイコンは商標登録が可能


この疑問をふと思いたったとき、本のメッカである神保町にちょうどいた私。大きな書店の法律書コーナーに駆け込んで、手当たり次第本を開いていった所、この本にその答えがバッチリ書いてありました。この本の第五版は既にこのブログでも紹介済みですが、奥付によれば明日2012年7月27日発売となっているこの第六版は、スマホやクラウド対応に伴って第五版から大改訂されていたので、立ち読みで済まさずにちゃんと買って帰りましたよ(笑)。


知って得する ソフトウェア特許・著作権 改訂五版知って得する ソフトウェア特許・著作権 改訂六版
著者:古谷栄男
販売元:アスキー・メディアワークス
(2012-07-26)
販売元:Amazon.co.jp



アイコンについては(略)著作権法や意匠法で保護されることがあります。しかし、アイコンのうち、アプリケーションプログラム(アプリ)を表す画像は、現在の日本の意匠法において、スマートフォン(携帯電話)、PCまたは携帯情報端末そのものの機能とは異なるということで、保護の対象とはなっていません。

一方、アプリを表すアイコンであっても、それがアプリを購入等する際の目印として機能する場合には、商標法の保護対象となります。一般的には、図形的な商標として認識されることになるでしょう。

iTunesなんかはどう見てもアイコンが購入する際の目印になっているわけで、やっぱり思った通り商標権でいけるのかと、まずは一安心。


実際各社はどうしている?


しかしながら、AndroidアプリとiPhoneアプリの何万とあるアプリすべてが商標出願しているとは思えません。実際、みなさんどうしてるんだろうと思い、調べてみることに。

アップルについては、先ほどの本にこのように権利化済みアプリアイコン(スマホだけでなくMacのものも一部含まれる)が一覧化されていまして、さすがモバイルにアプリの概念を持ち込んで普及させた会社だけはある、といったところ。

s-IMG_9613

具体的に一つ、その詳細を見てみると、たとえばみなさんよくお使いのiPhoneカメラアプリのアイコンの商標登録情報がこれ。

applcamera

指定商品第9類で、かなり細かくきっちりと記述してありますね。指定役務も何かしらあるかと思ったんですが、これがまったくなかったのが意外な感じです。


ではGoogleはどうでしょうか。IPDLの商標出願・登録情報検索画面で「出願人:GoogleINC.」をキーに検索したところ、出てきた商標は20数件。出願内容を開いて見てみると、ChromeやGmailアプリのアイコンに近いものはありました(国際登録1024150Aなど)が、アップルのように明確にアイコンとして登録しているものではありませんでした。

googlist


一方で日本企業のアプリ/ソシャゲー大手数社も同様の方法で検索してみましたが、見つかったのはこのMobageのアプリアイコンぐらい。

denamobage

こちらは指定役務第45類「ソーシャルネットワーキングサイトの開設・運営」のみでした。

“機能”を表すアプリアイコンは商標登録を


というわけで、ざっくりとしたリサーチではありますが、各社としてはアプリアイコンの一つ一つをいちいち商標出願しているという状況ではないようです。確かに、ゲームアプリを沢山開発しているような企業が全部出願してたらコストも大変ですし、会社のロゴマークやキャラクターが書いてある分には、すでに正当に有している商標権や著作権で守られるわけで、あまり心配はないかと思います。

しかし、ツール系アプリのように、アプリが発揮する機能を上手い図案で表現したような「このアイコンはあの会社が作ったあの機能を有するアプリ」と想起されるようなアイコンを開発したのであれば、出願をして商標権をもって他社を排除できる/他社から侵害を主張されない強力な権利を手に入れるという手は、検討しておくべきでしょう。まさにアップルがそうしているように。

特に、上で紹介したカメラアプリのアイコンが典型例ですが、“機能”を絵で描写しただけの一見普通のアイコンだと、創作性に欠けると評価され著作権だけで戦うのは難しいと思われます。しかし、その普通のアイコンがひとたびどこかの会社に商標登録されてしまうと、自社アイコンが商標権侵害になる状況に追い込まれる可能性もあるわけです。事実、カメラアプリやメールアプリはアップルのものに似た“権利侵害アイコン”がうじゃうじゃ存在するわけで・・・。

アップルがそんな意地悪をするとは思いませんが、ライバルとして目に余った場合には、商標権を振りかざされるリスクもあるということを十分認識の上で、アプリアイコンを決定していただいた方がよさそうです。