個人的には流行り始めに少し使ったきり続かなかったこともあって、今週ネットで大騒ぎだった写真フィルター&共有アプリ"Instagram"の利用規約改訂騒ぎについてはスルーしようかと思っておりましたが、私が当初予想したよりも大騒ぎに発展したこともあり、利用規約ウォッチャーのはしくれとして遅ればせながら記録方々一言書いておこうかと思います。


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Slashgearさんより傑作マッシュアップ画像を拝借


Instagramの利用規約改訂騒動とは


そもそもInstagramの利用規約改訂騒動って何のこと?という方のために、私が様々拝見した中で利用規約の文言解釈含め一番正確・冷静に捉えてまとめて下さっているなと思った記事をまずご紹介。

【インスタグラム騒動まとめ】Instagram運営「みんなの写真を事業や広告に使うかも」 ユーザー「フリー素材になるのイヤだ退会する!」→ それは少し誤解(ROCKET NEWS 24)
人気の画像共有サイト「Instagram」が大炎上している。あらゆる情報が錯綜しており、ユーザーから退会を検討する声も続出しているのだ。その理由は、利用規約とプライバシーポリシー改定だ。
■Instagram騒動の注目ポイント
・Instagramがプライバシーポリシーと規約を改定した(2013年1月16日から有効)
・新プライバシーポリシーに「事業」で写真等を共有する可能性があると書かれている
・新規約には「広告に使われる可能性がある」と書いている
・広告における具体的な利用方法などは明記されていない
・改訂内容が「写真がフリー素材になる」など拡大解釈され拡散してる
・拡大解釈を確定的な事として誤解している日本人ユーザーが多数いる

その結果、どうなったかというと、InstagramのファウンダーKevin Systromがブログで謝罪し、「ユーザーの写真を売るような意図はなかった」として、利用規約の再改訂案を提出するということになりました。

私達日本人にとっては、mixiが著作権に関する利用規約を改訂しようとして炎上したときから何度か見覚えのある、ノスタルジーすら感じる古典的謝罪劇だなあといった感すら漂います。

法務目線に見える“うっすらとした悪意”


しかし、当初心配したような写真がフリーにばら撒かれるということがないと確認されたとはいえ、法務目線で見ると元々の改訂案はSystrom氏の謝罪コメントとは正反対の“うっすらとした悪意”を感じざるを得ないものだったことは、記録しておくべきかと思いました。それは(狭義の利用規約の方ではなく)プライバシーポリシーの改訂案に記載されていたこの言い回しです。

Privacy Policy(Instagram)
3. SHARING OF YOUR INFORMATION

We will not rent or sell your information to third parties outside Instagram (or the group of companies of which Instagram is a part) without your consent, except as noted in this Policy.

Parties with whom we may share your information:

We may share User Content and your information (including but not limited to, information from cookies, log files, device identifiers, location data, and usage data) with businesses that are legally part of the same group of companies that Instagram is part of, or that become part of that group ("Affiliates"). Affiliates may use this information to help provide, understand, and improve the Service (including by providing analytics) and Affiliates' own services (including by providing you with better and more relevant experiences). But these Affiliates will honor the choices you make about who can see your photos.

Instagramは、AffliatesにUser Content(写真、そのコメント、フレンド情報)とyour information(クッキー、ログ、デバイス情報、ロケーションや利用状況に関するデータ等)をシェアでき、Affiliatesはその情報をサービス運営やその改善を目的に利用できる。ただし、Affiliatesは誰が写真を閲覧できるかについてのユーザーの選択を"honor"する、と。

うっすらとした悪意を感じるというのは、私が下線を引いた部分のうちのこの最後の部分。法務の人が普通にドラフティングすれば、ここでhonorなんて曖昧な語は使わないはずです。 このhonorがなかったら、Systrom氏の言う「Instagramの真意」も信じられたと思いますが、私はこのhonorを見た瞬間、「あ、Instagram(と親会社であるFacebookの法務)は、意志をもって敢えて曖昧な語で将来のための解釈の余地を広げておこうとしたんだろうな」と感じました。日本のブログでは、このプライバシーポリシー側の変更に注目している記事は少なく、もっぱら「利用規約を良く読めば『写真の所有権(著作権)のコントロールはユーザーにある』と書いてあるじゃないか、何を心配しているんだ?」という意見が多かったようですが、英語圏のブログではむしろプライバシーポリシー側の曖昧さやいい加減さを批判・懸念していたように思います。

日本の個人情報保護法の視点でみても、ここで定義されたUser Contentとyour informationすべてをこの一文でAffiliates=Facebookに提供するというのは、個人情報保護法第23条に定める共同利用の通知・同意取得と捉えたとしてもやや乱暴にすぎると評価されるのではないでしょうか。おそらく、次回提出される利用規約&プライバシーポリシー改訂案では、このhonorの語は消え、Facebookに何を共有し何を共有しないのかをクリアにするのでは、と私は予想しています。

じゃあどうすりゃいいの?の続きは利用規約ナイトVol.2で!(※未承諾広告)


こういった利用規約やプライバシーポリシーの制定・改訂のたびに、私達企業法務も、「後々のことも考えて汎用性を持たせておきたい」と下心を出してしまったり、「規約を見せて同意をとりさえすればなんでもできる」と勘違いをしてしまいがちです。そして、そのちょっとのおイタが過ぎるとこういった大炎上騒ぎになるということが、日本のみならず世界でも繰り返されているのだという事例・教訓を、今回も目の当たりにできました。

こういった事態にならないように、ウェブサービス運営側として何をどう気をつければいいのか?先日宣伝させていただいた利用規約ナイトVol.2の運営事務局では今、まさにこのInstagramの事例も当日の発表やパネルディスカッションでの題材としていこうかという話になっています。お陰様でご予約は満席となり、当日までまだ3週間ちょっとの時間がありますが、当日ご参加される方も是非活発なご意見・ご質問をいただければ幸いです。