奥付によれば9/13発行,しかし本日現在Amazonでは品切れが続き,大型書店への入荷も少なく,入手困難となっているらしい『インターネットの法律問題』を運良くゲット。





労働法でいえば濱口桂一郎先生の本がそうですが,広大かつ法改正の頻度が激しい法律分野を深く有機的に理解するには,「なぜそれらの法が必要とされ、成立したのか」という背景・ストーリーとしての“昔話”を知ることが,その手助けとなると思います。この本はおそらく全著者がそれを意識しており,法案成立→改正の歴史をたどるところから解説がなされています。これは裏を返せば,「新しい法分野」であったネット関連法も,ようやく振り返り語れるだけの歴史が積み重ねられてきたということでもあるでしょう。そういった歴史をストーリーで辿る部分が多いせいもあってか,各章の執筆者が各論について自説を展開する要素はかなり少なめに抑えられています。

(関啓一郎先生担当の2〜3章を除き)本文中図表は少なく,紙面いっぱいに文字が詰まっている印象を受けるかもしれません。かといってその分野の論点を理解するのに最低限必要なキーワード,参考文献,行政ガイドライン等は丁寧に紹介されているので,消化不良感はありません。

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そんな概説書といった趣の強い本書の中でも私が強い個性を感じたのが,第7章の産業財産権の章です。インターネットビジネスにおける産業財産権の分野では,よく紛争となる商標・ドメインネームの問題については多くが語られてきた一方で,特許権の話になると企業間の紛争事例が日本では少ないこともあってか,結局「ソフトウェア特許」の話に終始して尻すぼみに終わる本ばかり。そんな中でこの本は,ネットビジネス関連特許出願時の請求項の立て方が実施においてどう影響するかや,域外実施への対抗の難しさといった特許の現実問題について言及されており,隠れた見どころになっているかと思います。自分が今ネットビジネスの特許を集中的に勉強しているということもあってアンテナが立ってしまったところもありますが。

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ソーシャルメディア時代の個人情報保護Q&A』『良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方』など,どちらかというと今話題・注目の論点にフォーカスして論じる書が続々刊行されてきたネット法務本の世界にあって,揺るぎない基礎を作るために深く杭を打ってくれる本が出た,といった感じがします。
 

2014.10.25 
推薦本のリンクを一部削除しました。