IT・ソフトウェア・システム開発契約における「瑕疵担保責任」を、最も詳しく・やさしく・噛み砕いて説明してくれる本としてオススメ。





法律をしっかり勉強した人が法務をやっているなら、
・瑕疵担保責任が無過失責任であることの意味
・法定の瑕疵担保期間の考え方
・準委任契約における善管注意義務との違い
などは当然に理解した上でIT・ソフトウェア・システム開発の契約をレビューしているはず。なのですが、私の実戦感覚では、この辺の法律をベースにした会話が通じない法務担当者がまだ30〜40%ぐらいはいらっしゃるんじゃないか、と感じます。

先日も、“瑕疵担保責任”との見出しが付いた条項の中に「仕様書との不一致について納入時の検査で発注者から指摘がなかった場合については、受注者は責任を負わない」という主旨の規定があり、「つまりこれは御社として瑕疵担保(無過失)責任を負うつもりがないという主旨ですか?」という質問と修正案を返したところ、「瑕疵担保責任とは、“隠れたる瑕疵”が生じた場合を想定した規定であって、あくまでも仕様書との不一致は貴社が検査時に見極めるべきものであり・・・」云々という謎の解説が帰ってきて途方に暮れました。この法務担当者のせいで、その会社さんとは契約を締結しないことになりそうな気がします。

ソフトウェア・システムの開発委託契約における瑕疵担保期間の基準は6ヶ月?』と題した本ブログ記事の反応にも、その一つの現われが。この記事では、なぜ請負契約の瑕疵担保期間(1年間)に商法の特則(6ヶ月)が適用されないのかをかなり丁寧に書いたつもりなのですが、それでも「民法637条より商法526条が優先するはずだ」「6ヶ月が正しい」というご主張がコメント欄に複数ついているのが、ご確認いただけます。

私がこの分野の座右の書としている『ソフトウェア取引の法律相談』でも上記2点についてフォローはされているものの、法律家向けの書籍ということもあって、この辺は常識として1〜2ページ程度のサラッとした解説にとどまっています。一方、本書では、冒頭70ページあまりをこれら瑕疵担保責任まわりの解説に費やしているので、読んで分からないという人はいないんじゃないかなと。先の例のような方と会話を成立させる意味でも、これでもか!と文字で噛み砕いてくれいている書籍が欲しかったところですので、今度そういう相手方に遭遇した際には「『トンデモ“IT契約“に騙されるな』のP◯◯を、騙されたと思って読んでいただけませんか?」と返答させていただくことにします。


また、伊藤雅浩先生のブログhitorihoumuさんのブログも触れていらっしゃるとおり、この本の中で紹介されている発展的議論としては、IT契約においては、瑕疵修補に代わる損害賠償請求権とは別に瑕疵修補とともにする損害賠償請求権が請求でき、後者は債務不履行責任に基づく損害賠償請求権であるため、民商法の原則どおり5年間請求できるのだという説が述べられている点でしょう。

tondemoitkeiyaku

実際にこれを武器に戦った経験はないのですが、スルガ銀行vsIBM訴訟を戦い抜いている上山先生がおっしゃるのですから、訴訟上も主張しうるのでしょう。ちょっと判例を研究してみたいと思います。