Apple、Google、Amazonら各社のプラットフォーム規約を見ると、最初にこのビジネスモデルを確立したAppleの規約の要素を真似ている様子が垣間見えます。そこで、まずAppleのプラットフォーム規約を抑えた上で、その他同業他社の規約を見ていくことにしましょう。


Appleのプラットフォーム上でiOSアプリを開発し、AppStoreで販売しようと場合、まずデベロッパーアカウントを開設する必要があります。そこで最初に同意を要求されることになる規約が、“Registered Apple Developer Agreement”です。なお、Appleのプラットフォーム規約は、他社(Google,Amazon)と異なり、すべて英文のみでの提供となっています。


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まず全体像を俯瞰してみます。以下は、各条項の見出しのみを列挙してみたものです。

Registered Apple Developer Agreement
1. Relationship With Apple; Apple ID and Password.
2. Developer Benefits.
3. Restrictions.
4. Confidentiality.
5. Nondisclosure and Nonuse of Apple Confidential Information.
6. Confidential Pre-Release Materials License and Restrictions.
7. Paid Content License and Restrictions.
8. Compatibility Labs; Developer Technical Support (DTS).
9. Amendment; Communication.
10. Term and Termination.
11. Apple Independent Development.
12. Use Of Apple Trademarks, Logos, etc.
13. No Warranty.
14. Disclaimer of Liability.
15. Third-Party Notices.
16. Export Control.
17. Governing Law.
18. Government End Users.
19. Miscellaneous.

経験ある法務担当者であれば、この見出しを見ただけで大体何が書かれているか予想がつくことと思います。まず1で契約関係の明確化およびアカウントのID・PASSの管理責任が定められ、2〜3にデベロッパーの特典および守らなければいけない義務、そして4〜6に秘密保持に関する義務、9.規約の修正ルール、10.契約期間、11がApple商標使用のルール、13.非保証、14.免責、15.通知、16.輸出管理、17.準拠法と続き、19その他一般条項という流れ。見出しだけでは予想がつかない条項としては、7・8・11・18あたりでしょうか。


ところで、この“Registered Apple Developer Agreement”の冒頭には、以下のような文言が大文字(CAPITAL)で記してあります。

THIS IS A LEGAL AGREEMENT BETWEEN YOU AND APPLE INC. ("APPLE") STATING THE TERMS THAT GOVERN YOUR PARTICIPATION AS A REGISTERED APPLE DEVELOPER. PLEASE READ THIS REGISTERED APPLE DEVELOPER AGREEMENT (“AGREEMENT”) BEFORE PRESSING THE "AGREE" BUTTON AND CHECKING THE BOX AT THE BOTTOM OF THIS PAGE. BY PRESSING "AGREE," YOU ARE AGREEING TO BE BOUND BY THE TERMS OF THIS AGREEMENT. IF YOU DO NOT AGREE TO THE TERMS OF THIS AGREEMENT, PRESS "CANCEL" AND YOU WILL BE UNABLE TO BECOME A REGISTERED APPLE DEVELOPER.

「画面下の“AGREE”(同意する)ボタンを押すと、デベロッパーは法的にこの規約の各条項に拘束されることになる」旨書かれています。すべて大文字になっているのは、米国の判例法上、重要な条項はこのように注意を引く形式で表記しなければ対抗できないとされているためなのですが、実際、ここに書かれている点は、デベロッパー企業の契約管理上、留意が必要です。

日本の契約慣行では、特に事業者間の契約においては通常書面に代表者等の押印が求められるので、担当者が勝手に契約してしまうということは(よっぽどの悪意が無い限り)ほとんどないでしょう。しかし、このようなプラットフォーム事業者とのデベロッパー契約は、ウェブ上のクリック操作でかんたんに契約できてしまいます。これはAppleに限ったことではなく、GoogleやAmazon等も同様の形式になっています。この記載は、そういった(安易な)クリックであっても有効に契約が成立したことになる、という注意喚起をしている表記です。本来は、法務や関係部門に稟議等必要な承認を得た上でクリックしなければならないはずでも、こういったデベロッパーアカウントの開設作業を行うのは現場のエンジニアだったりするわけで、このクリックがどのような意味を持つのかを考えずに、アカウント開設=プラットフォーマーとの契約締結を行っているのが実態でしょう。

※ちなみに、Appleの場合はサポートセンターのQ&Aにこのような記載がありました。ただ、実際のところ誰がクリックしたかまでは分からないですよね。

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消費者との契約においては、こういった「クリックラップ」契約(FDやCD-ROM時代のソフトウェアライセンスが、パッケージを破ったらライセンス契約に同意したこととみなす「シュリンクラップ」契約だったことになぞらえて、読んだかどうかにかかわらずクリックしたら同意したとみなす契約の意)が有効な契約となるのか?という論点がありますが、プラットフォーマーとそこに参加する事業者との契約においても、同じような論点が取り沙汰されてくるかもしれません。
 
全体像を抑えたところで、次回より、規約各条文の詳細について、逐条で確認していきます。