万国著作権条約により、無方式主義を採用している国の著作物であっても、©(マルシーマーク、英語ではthe letter C enclosed within a circle)表示をすることで、方式主義の国においても自動的に保護が受けられるようになっているのは、多くの方がご存知かと思います。


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過去、アメリカ等いくつかの国が方式主義にこだわり、無方式主義を原則とするベルヌ条約に加盟をしなかったため、それらの方式主義国において万国著作権条約に基づく保護を受けるためにも©表記は必須とされていました。ところが、そのアメリカが1989年にベルヌ条約に加盟したたため、©表示がない日本の著作物も同条約によりアメリカで保護されることになりました。こうなると、いまや方式主義を採用する国はラオスぐらいしかないこともあって、もはや©表示に法的には意味がないとも言われています(この点については後述)。・・・とは言いながら、実際は©表示をしているコンテンツがほとんどではないでしょうか?

そこで今日取り上げたいのが、オンラインコンテンツにおけるマルシーマークの表記方法についてです。

万国著作権条約に定められた©表示の要件とその問題点


万国著作権条約第3条によれば、©表示の要件として、
・著作権者の名
・最初の発行の年
とともに「©」の記号を表示することが必要とされています。そして、「©」の記号、著作権者の名及び最初の発行の年は、著作権の保護が要求されていることが明らかになるような適当な方法でかつ適当な場所に掲げる必要がある、とあります。

ここで問題になるのが、連続的に変化する著作物の©表示の発行年の書き方です。なぜなら、書籍・CD(レコード)など、著作物を物に固定することが前提であった時代は終わり、いまどきのウェブサービスやスマホアプリは、オンラインでコンテンツの追加・更新・バージョンアップを繰り返し、継続的に運営していくコンテンツに変化してきているからです。もちろん、文章の著作物や音楽著作物であっても改版やリミックス版といったコンテンツのバージョンアップはあるわけですが、オンラインコンテンツにおける頻度・量・差分の大きさは、その比ではありません。

そういう連続的に変化していくことが前提となるオンラインコンテンツの©表記において、最初の発行の年“だけ”を表記するのもどうなのだろう?と思ったわけです。

発行年を幅表記する


いっそ、年表示は抜いてしまうのがいいのではないか、とも考えました。事実、オンラインコンテンツを見ていると、年表示をしない©表示を多数見かけます。しかしながら、前述のとおり条約の条文にははっきりと「最初の発行の年」が表示要件として書かれているわけです。これを無視するわけにもいかず、はて、どうしたものか・・・と悩んだ私の結論はこれ。

© 2005-2014 ABC, Inc.
Copyright © 2005-2014 ABC, Inc. All rights reserved.

条約上は上の記載例のみでOKなのですが、一般的には下の表記が多用されているので一応。

幅表記は不適切という意見への反論


ネット上の記事では、“2005-2014”のような発行年表記は間違いとか、年表記は無くてもよいのであるとしているものも多くあります。しかし、条約には「最初の発行年」が書いてあることが要件とされている以上、むしろ発行年を何も書かないことの方が問題であるし、一方で“-2014”のように最新の発行年(更新年)を付記したからといって無効となるわけではない(-2014を表示してはならないわけではない)、と私は考えています。

もちろん、実際に発行年が問題となるような紛争になれば、©表記された発行年如何にかかわらず、その連続的に変化した過程のコンテンツ1つ1つごとに正確な発行年を立証しながら争うことになるのでしょう。しかし、「-2014」を付記したからといって無効となるわけではないというこの考えが正しいと仮定すれば、連続的に変化する著作物においては、©表記の発行年は幅表記をし、その最古年だけではなく最新年もあわせて発行年として「主張」しやすくなる余地を残しておくべきではないかと思います。最古年表記がないと、「ウチの方が先に著作してたぜ、パクったのはそっちだろこの野郎」と言い難くなりますし、一方で最新年表記がないと、死後または公表から50年という著作権の保護期間をフルにenjoyしようというシチュエーションで不利になりかねません。少なくとも、このような発行年の幅表記をもって「主張」することについて、利はあっても害はないものと考えます。

なお、世の中の事例を見てみますとみなさん迷っていらっしゃるご様子。大手ネットサービス企業は最新年・現在年である2014年表示が多いものの、年表示せずに©と権利者名だけ書いている例もかなりあります(ちなみに裁判所サイトは最初の発行年である2005年を表示していました)。一方、私が携わっているエンタテインメントよりのオンラインサービスのご同業で、知的財産権に強いと定評のある企業さまは、軒並み発行年の幅表記を採用していました。連続的に変化していくコンテンツの著作権を、スナップショット的に捉えるか、ストック的に捉えるかという考え方の違いも反映されているのかもしれません。

©表示にこだわる価値・意味自体がもはや無い、という言説について


上述のとおり、「©表示をしなくてもほとんどの国で保護されるのだから、©表示自体にもはや意味が無い」という言説もよく目にするわけですが、本ブログでも近々ご紹介しようと思っている『よくわかる音楽著作権ビジネス 基礎編』P167に、こんな記載がありましたので、ご紹介まで。




1989年にアメリカがベルヌ条約に加盟したことによって、©表示がアメリカで保護されることについてまったく意味を持たなくなったと考えるのは早計である。アメリカ著作権法には、「善意の侵害者(innocent infringers)」という言葉が出てくる。これは著作権表示に関する条文に登場するのだが、か簡単にいえば、著作権に著作権表示がなされていないことから、その著作物がパブリックドメインだと信じ、善意でその著作権を侵害した者をいう。方式主義国のアメリカならではの規定である。
この善意の侵害をした場合、もしも著作物に©表示がなければ、侵害者が善意でやったことであり、無過失であることを立証できれば善意の著作権侵害ということになる。(略)
では、著作物に©表示があった場合どうなるのか。この場合、侵害者は「パブリックドメインであると思った」「権利が生きているとは知らなかった」などと言い逃れはできない。なにしろ、はっきり第一発行年と著作権者名が表示されているのだから。したがって、アメリカ著作権法は原則として侵害者に善意の侵害を認めないこととしている。
以上のことから、アメリカがベルヌ条約に加盟した後でも©表示は必要であることは、一目瞭然だろう。