「若手弁護士向け」というタイトルで私には敷居が高いかな?と思いきや、流暢な講義を聞いているような筆致でとても読みやすい本でした。企業法務に携わる人が、裁判とはどういう手続きで、どのように進んでいくのかをすみずみまで理解したいのであれば、この本が一番ではないでしょうか。





2月1日現在、Amazonだと品切れ表示になっていますが、私が入手した平成26年1月6日付第二版がちょうど発行されたところのようですので、そろそろ市場には出回っているものと思います。

2014.2.9追記:
圓道先生より、Amazonでは販売停止となっているとのことで、以下のようにご案内いただきました。ご教示ありがとうございます。



 
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依頼者(潜在的原告)が弁護士に相談に行くところから、訴え提起→裁判所の受付→送達→第1回口頭弁論期日→続行期日→証拠調べ期日→最終口頭弁論期日→判決言渡し期日、そして控訴審へと時系列に徹底的に忠実に書かれているのが読みやすさのポイントですね。書式サンプルも、委任状から内容証明、口頭弁論再開の上申書といった訴訟実務に使われるものまで50種以上をカバー。その端々に、細かいノウハウが披露されています。こんな細かいところまでカバーしてるんですよというご紹介方々、以下、私が「へーそうなんだ」と思った点をいくつか。

  • 証拠収集のための弁護士紹介費用は、東京弁護士会の場合1件1箇所で7,000円
  • 被告会社の代表者として、監査役とすべき場合と代表取締役とすべき場合がある点注意
  • 口頭弁論期日に先立って訴状に誤りがあれば、職印訂正ではなく訴状訂正申立書を出すのが望ましい
  • 裁判所の開廷日は、裁判体ごとに曜日が決まっている(ウェブサイトの担当裁判官一覧で確認可能)
  • 書証のうち、証拠として重要な部分が一部分であれば(コピーで写らない)黄色でマーキングするなどの配慮もよい
  • 自己に有利な記載と不利な記載のある社内文書について準備書面中に不用意に言及すると、法220条1号の引用文書にあたる旨を相手方に主張され提出義務が認められるケースも
  • 裁判所が筆跡の同一性を検討する際の方法にはいくつかあり、筆跡鑑定の証拠としての価値は実は大きくない
  • 裁判所が弁論を終結しようとすることに対する引き伸ばしの忌避の濫用に注意
  • 反対尋問においては、ウソをついていたと認めさせるまで深追いすると、相手方の当事者本人・証人が意図に気づいて供述を修正してしまうので、裁判官にその意図を理解させれば十分
  • 判決言い渡し期日に出頭しても、判決書の送達を受けなければ、2週間の控訴期間はスタートしない

先日、この本の著者、圓道至剛先生のお話を伺う機会に恵まれました。ご存知の方も多いと思いますが、先生は元裁判官というキャリアをお持ちの弁護士でいらっしゃいます。短い時間ながらも、企業の訴訟担当者が外部弁護士とどう協働すれば裁判に勝てるのかを、裁判所トリビアを交えて楽しくお話くださいました。当日頂いたレジュメも情報量が多く大変参考になるもので、この本と一緒にして何度も見返しています。内容はオフレコもあり詳細控えますが、一つ、企業の訴訟担当者や若手弁護士が抱きがちな勘違いとして教えていただいたのが、裁判とは、相手方当事者・弁護士を説得する場ではなく、あくまで裁判所(官)に当方主張の優位性を理解してもらう場である、つまり、話し相手は裁判官だということ。

ドラマでは弁護士同士が丁々発止で主張し合い、裁判官は置いてけぼりで話についていけずに蚊帳の外・・・といったシーンがよく見られます。しかしあれを本当に裁判所でやってしまったなら、本来の“主役”であり、事案を隅々まで理解して判断すべき裁判官からすれば、「じゃあ私抜きで、当事者同士よく話し合って和解したらどうですか」という気持ちなるのも当然なのかもしれません。いや、ベテラン弁護士の方からすれば当たり前のマナーなのでしょうが、いままで訴訟の進行を傍聴席から見て違和感を感じていた私としては、まさに目からウロコのお話でした。

そういった圓道先生ならではの“裁判官視点”はこの本にも存分に発揮されており、弁護士からの視点に加えて、裁判所が裏でどう訴訟を進行しているか、裁判官がどう当事者・弁護士のアクションを評価しているかという視点からの描写も多く、この点、他の民事訴訟の実務解説本とは一線を画していると言えます。