BLJ5月号で、あの『英文ビジネス契約書大辞典』の山本孝夫先生が新しく英文契約書のノウハウについての連載を始められていて、そこで取り上げられていたネタが早速ツボ。





お題は、秘密保持契約や信託契約などにおける相手方の情報・資産を受け取った側(Receiving Party)の注意義務の水準について。先週メンバーの一人にNDAのレクチャーをしていた際、まさに話題にしていたポイントでした。

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山本先生の著作ではおなじみの登場人物「飛鳥凛」が、「ブラック・パンサー社」と秘密保持契約の交渉をするという設定。飛鳥が、

with the due diligence of a prudent merchant
善良なる管理者の注意義務をもって

でドラフティングしたところ、ブラック・パンサー社が「善管注意義務なんて空想にすぎない。第三者の財産の管理に払われる注意義務の水準はおしなべて低いものだ」等々口八丁手八丁の熱弁をふるい、

with regard to its own Confidential Information
自己の情報資産に払う注意義務をもって

と修正カウンターを入れてきて、さあ、飛鳥はこれにどう対抗する・・・?というストーリー展開。

記事の結末はもちろん綺麗な落としどころで終わっているわけですが(ぜひ同誌をご確認ください)、実際のところ、善管注意義務でのドラフティングって、日本国法を準拠法としない外国企業との契約交渉ではすこぶるウケが悪いのは事実ではないでしょうか。それもあって、恥ずかしながら私、相手方がまともな企業という条件付きではあるものの、日本法以外では「自己の〜」の方がむしろスタンダードとどこかで刷り込まれた認識がありまして、

with the same degree of care normally used to protect its own similar Confidential Information
自己の同様の秘密情報に用いるのと同程度の注意義務をもって

ぐらいを落としどころにするのでOKとしていました。はたしてこの思い込みはどこから来たのだろう?と手持ちの英文契約書関連の蔵書を何冊も紐解いたのですが、どこにもそんなことは書いてません(汗)。

それこそ山本先生の『英文ビジネス契約書大辞典』の第一版だったかも、と紐解いてみたのですが、意外なことに、第一版では秘密保持契約書自体が項目として独立してなかったんですねー。一般条項としての秘密保持条項については少し触れられていますけども。それに対して、先月発売の増補改訂版では第8章が一章分まるごと秘密保持契約、内容も今回の連載記事とちゃんと連動したものとなっていました。さすが、大改訂しただけのことはあります。

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英文ビジネス契約書大辞典<増補改訂版>
山本 孝夫
日本経済新聞出版社
2014-02-06



思い込みは怖い・基礎知識の定期的な振り返りは必要、というお話でした。