パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱(事務局案)」がリリースされました。


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この大綱が決まるまでビッグデータビジネスの展開を様子見としていた企業にとっては、首を長くして待っていた文書であったはず。果たしてその期待に応えるものとなりそうでしょうか。

個人情報保護法改正の看板は下ろされた?


第1回パーソナルデータに関する検討会議事要旨にも記録されているとおり、もともとこのパーソナルデータの議論には、個人情報保護法の改正も視野に入っていたはずです。民間企業も、この大綱で改正の方向性がどう示されるかに注目していたと思います。

しかし、今回の大綱案では
法律では大枠を定め、具体的な内容は政省令、規則及びガイドライン並びに民間の自主規制ルールにより対応することとする
と記されるにとどまっています。また、この大綱のベースとなっている第10回会合の資料4ー2「これまでの議論を踏まえた論点整理表」の中にも
・現行法の個人情報については、解釈の明確化を図る。
(理由:現行個人情報の定義につき、カッコ書きを削除するべきという意見については、事業者内部において個人を特定してデータを利活用できるものが保護対象から外れることとなり、個人の権利利益保護の観点より受け入れられない。)
・一般的な同意取得方法を定めることは多様な情報利活用実態より困難であり、法律の改正によらず、第三者機関のガイドライン等の策定や自主規制の導入により改善を図ることとする。
といった記述が見られます。

これらから、グレーゾーン問題の原因ともなっていた個人情報保護法の大改正に踏み切るのは、どうやら諦めていることが伺われます。期待を裏切られたと思う企業法務パーソンも少なくないかもしれません。

第三者機関への依存度の高さが気になる


大綱案P7以降で、制度改正の基本的な枠組みとして、
 1 本人同意がなくてもデータの利活用を可能とする枠組みの導入等
 2 基本的な制度の枠組みを補完する民間の自主的な取組の活用
 3 第三者機関の体制整備等による実効性ある制度執行の確保
の3つが掲げられたわけですが、よくよくその中身を読んでみると、少々おかしなことに気付きます。

3に第三者機関が登場するのは分かるのですが、1についての説明においても
データの加工方法等について自主規制ルールを策定し、第三者機関による認定を受ける
とあり、また2についての説明においても
「個人情報」等の定義への該当性判断は、第三者機関がガイドライン等を用いて解釈の明確化を図る
オプトアウト規定を用いて第三者提供を行う場合には、現行法の要件に加え、第三者機関に対し、法に定める本人通知事項等を届け出ることとするほか、第三者機関は届け出られた事項を公表するなど、必要な措置を講じる
とあり、つまるところ、解決すべき問題の行き先はすべて第三者機関頼みとされているのです。

国際的にはプライバシーコミッショナーの設置が急がれている中、第三者機関の設置の必要性に異論を唱える委員はほとんどおらず、すんなりと決まって事務局もほっとしているというのが正直なところではないかと思いますが、それをいいことにほとんどの問題解決を先送り第三者機関に押し付けているように見えるのは、私だけでしょうか。

あるべき基準は待っていても誰も教えてくれない


合法違法の基準定立と処分権限を第三者機関に一元化し、取り締まり事例を積み重ねることでだんだんと基準を明らかにするというやり方は、まるで第三者機関がコモンローの国の裁判所を務めるかのよう。さらにはマルチステークホルダープロセスを取り入れるとも言っているわけで、肝心のパーソナルデータの取扱い基準自体が確立するまでに長い時間がかかりそうですし、それを見出す道程は、専門家が入るとは言っても、第三者機関には少々荷が重いような気もします。そして、主務官庁ではない、しかしなんらかの行政処分権限を持つ機関が新たに生まれ、民間企業等の情報の取り扱いに関与するということについて、憲法的な意味でもう少し議論や抵抗があっても良かったのではと。

いちおう制定法主義かつ三権分立の国なのですから、行政を縛る意味でもはじめは緩やかな基準からでも個人情報保護法またはその施行令で基準を明文化し、それで問題となる事例が生まれればだんだんと厳しくしていく(ただし正当な法令改正の手順を踏んで)というやり方が望ましいのではないか。法令化が無理でガイドラインで対応するにしても、第三者機関が誕生してから考えはじめるのでなくて、緩やかなガイドラインをこの検討会で定めた上で、第三者機関に託してスタートしてはどうだろうか。そんなことを思いましたが、今の流れでは難しいでしょう。

自分たちのビジネスにおけるあるべきパーソナルデータの取扱い基準は、待っていても誰かが作ってくれるものではない。誰の目にも耐えられるものを、第三者機関ができるまでに自分たち自身で考えておけ。そういうメッセージと私は受け止めています。