発売前に予約していたにもかかわらず、到着までだいぶ待たされてしまいました。書店への流通もまだ少なめなようです。こういうときはジタバタせずにAmazonに発注して、届くのをゆっくり待つのが吉。





著作権とインターネットの交わりを取り上げた本は数多く存在します。そして、それらには著作権法に軸足を置いたものと、インターネットの知的財産権法全般に軸足を置いたものの2種類に分けることができます。

参考までに、比較的新しめのものからいくつかピックアップしてみると、

・著作権法を論じる中で、インターネット特有の論点を多く取り上げた書籍
 『デジタル時代の著作権
 『著作権の世紀 変わる「情報の独占制度」
 『REMIX ハイブリッド経済で栄える文化と商業のあり方

・インターネット時代の知的財産法を広く概説する中で、著作権の論点を多く取り上げた書籍
 『デジタルコンテンツ法制
 『インターネット新時代の法律実務Q&A
 『インターネットの法律問題 ー理論と実務ー

こんなものがありますが、読了後それらとこの本とは何が違うのかを考えてみると、本書はその両者のちょうど真ん中の交差点、つまり、著作権法かつインターネット特有の論点に絞った本であるなあと。

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そして意外にもこのど真ん中のポジションをとる本が少ないことに、このポジションマップを書いているうちに気付かされました。まさにその隙を突いた本と言えます。
というか、よく見ると、その意図がこの本の表紙に大きく描かれた灰色のマルCとブルーの@によって、まさに表現されているじゃないですか(驚)!


前半は【必須知識編】と題して、著作権法そのものの中でも特にネットビジネスで問題となりがちな公衆送信権・翻案権・二次的著作物の利用権・著作隣接権を丁寧に解説し、後半は【実践編】と題して、オープン化・グローバル化に伴う最新の<ネット×著作権>まわりのトピックスを拾い集めた構成。法律上の細かい論点は丁寧さを失わない程度にうまく端折りながら、どちらかというと海外情勢を含む最新の著作権の「トレンド」を漏らすこと無く拾おうとする姿勢が、全体に溢れています。

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しかも、そのトレンドを語る語り部は、福井健策先生と、MHMの池村聡先生・増田雅史先生、そしてニワンゴ社長の杉本誠司氏という、著作権の最前線で実際に戦っている当事者たち。まえがきによれば、企画段階では元MHMでグーグル法務部長に就任された野口祐子先生も参加されていたとの由。実際の事件に関わっていない学者や弁護士が語るのとは一味違う凄みが、文章に漂っています。私も、増田先生が関わっている領域に身を置く者として、先生がどこまで実務の生々しいところに踏み込んでいらっしゃるのかを楽しみにしながら読ませていただいたわけですが、クライアントとの守秘義務と利益相反に配慮しながらの「真剣を振りつつ、ギリギリの寸止め」で執筆されていることが伝わってきます。部外者がニュース解説的に書くのはカンタンなのに対し、実務のスクランブル交差点にいる当事者がこういった本を書くのは逡巡があるはずで、しかしそれが十分に滲み出ているところも読みどころといえるでしょう。


余談ですが、まえがきによると、このCRICのエンタテインメントと著作権シリーズの既刊の改訂作業もすすめられているそうです。前4冊の中では特に『音楽ビジネスの著作権』にはお世話になりましたので、楽しみにしています。