次回のビジネスロー・ジャーナルのブックガイドで、著作権法部門の人気を総ナメするんじゃないでしょうか。


コンテンツビジネスと著作権法の実務
井奈波 朋子 (著), 石井 美緒 (著), 松嶋 隆弘 (著), 棚橋 祐治 (監修)
三協法規出版
2015-04-10



「実務」書を名乗る本の品質は、「当たればホームラン、しかし大振りなスイングが災いして空振り三振」な本も多く、玉石混交です。最近も「ライセンス◯◯◯◯の◎◎と実務」という中身が相当にアレな「実務」書を買ってしまい、苦虫を噛み潰していたところ。そのトラウマでドキドキしながら読み始めたのですが、大当たりの場外ホームランな本書。


第1部は、条文の建て付けに沿って著作権法をひと通り解説するところから始まるのですが、うざい「実務」書にありがちな経験談や自説の押し売りオンパレードもなく、むしろ、基本書以上に丁寧に判例を引用して現状の法解釈を確認した上で、各論点に突っ込んでいくスタイル。続く第2部は、出版/音楽/映画/放送/ゲーム/舞台芸術/商品化ビジネス/レンタルビジネスと、産業ごとに分解しながら、近時の論点をピンポイントに解説します。

想定読者レベルを高めに設定した解説となっていて、「当然、中山『著作権法』は十分に読み込んだ上でこれ読んでるよね?」という前提で読者層を足切りしている感があります。従って、そのレベルにある方にとっては、まわりくどい初心者向け教科書風解説にイライラすることなく、知りたいことだけがポンポン目に飛び込んで来る感覚。逆に、中山著作権法をまったく読んだことのない方には、ちょっと厳しいかも。
※中山『著作権法』の読者を意識していることは間違いないのに、本書で参照・引用しているのが初版という点は、もったいなさを感じるポイントではありました。


その発展的実務として取り上げている論点は、(本書のタイトルからすれば当然ではあるわけですが)コンテンツビジネスに関わる私のような者のストライクゾーンをズバズバと突いてくる感じ。私が付箋を貼ったところとそこで取り上げられているキーワードを、ちょっとピックアップしてみました。

・P32-39 二次的著作物 …複製・二次的著作・別個の著作物の境界
・P72ー85 同一性保持権 …プログラム著作物とゲーム
・P105ー119 パロディ …適法性をめぐる争点の整理
・P125ー131 未知の利用方法に関する契約解釈 …法61条2項の類推適用
・P131ー141 ライセンス契約 …OSSを契約とみるか単独行為によるライセンスとみるか
・P145ー159 著作隣接権 …シチュエーション別での実演家権影響範囲
・P198-219 侵害論 …制限規定の整理・カラオケ法理・メディアの注意義務
・P250-264 音楽産業と著作権 …サンプリングと原盤権
・P298ー322 放送業と著作権 …放送番組の二次利用の困難性
・P323ー331 ゲーム産業と著作権 …ゲームはプログラムか映画かその他か・組込み著作物
・P339ー348 商品化ビジネスと著作権 …キャラクターの著作物性
・P385ー392 プログラムの著作物 …プログラムの具体的記述と創作性判断基準

いずれも、著作権法に興味がある方にとっては興味津々なキーワードが並びます。かといって新しいキーワードばかりをつまみ食いするのではなく、プログラムの著作物やカラオケ法理といった典型論点も、最新の判例や視点も踏まえてしっかりと論じているところが、とても頼もしい本書です。


書籍の体裁としては、そんなに図表が多い本ではないこともあり、見た目取っ付きにくい感じもあるのですが、その中でキラリと光っていた2ページをご紹介。

1つめが、P107のパロディの適法性をめぐる争点を整理したチャート。文章では何度か読んだはずなのになかなか頭に入ってこなかった論点が、この図でようやくスッキリと。

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2つめが、著作権制限規定を一覧したP201の脚注。もちろん条文を丹念に追っていけば分かることではありますが、こう一覧化したものって、なにげに今まで無かったのでは。渋い。

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出版社の三協法規出版さんはあまり目にしない名前でしたので、ほかにどんな本を出していらっしゃるのだろうと調べてところ、2年前に弊ブログで絶賛した『ブランド管理の法実務』を出されている出版社でした。恐るべし。