技術面(OS)と営業面(アプリストア)の両面からスマートフォンアプリ市場を支配するプラットフォーマーは、アプリデベロッパーにとってはまるで“神”のような存在であり、その神を怒らせるとこうなる、というギリシャ神話のようなお話。

【悲報】モンストがAppleからリジェクトされ消滅、ミクシィに大痛手か(IT速報)
19時現在、モンスターストライク(モンスト)がAPP Storeからリジェクトされ、新規インストールや課金が不可能な状態に陥っています。

常にセールス1位or2位の大人気ゲームの異常事態に、ユーザーはもちろん、ソシャゲ界隈やmixi株界隈など、様々な方面から驚きの声が

なお、同タイミングで「シリアルコードの入力フォーム」の停止を発表しており、これが起因した可能性も。

実際にiOSからモンストにアクセスしてみると、アプリマーケットおよびランキングから消されてDLできなくなっているだけでなく、私のようにアプリをすでにDLしてあるユーザーであっても、課金サービスが一切利用できなくなっている状態。月商から逆算して1日数億円は売り上げていると言われるアプリだけに、ミクシィ社にとっての機会ロスの大きさは計り知れないものがあります。

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こんなことになってしまった理由について、こちらの記事では、同社が実施していたシリアルコード入力による特別アイテム付与キャンペーンが、プラットフォーマーの定めるガイドラインに抵触しているからでは?との見解が紹介されています。

モンスターストライク、App Storeから消える。原因はシリアルコードか(Yahoo!ニュース)
発表内容に「Apple社からの要請」とあるとおり、おそらくは「シリアルコードの利用」を問題にAppleからアプリをリジェクト(却下)されたのだと考えられます。

モンストは8月13日にシリアルコードの入力場所をアプリから公式サイトへと変更していましたが、Appleからは許されなかったようです。

2015.08.13 ※重要※ iOS版の「シリアルコード」入力場所の変更について/公式サイトから「シリアルコード」が入力可能に | モンスターストライク(モンスト)公式サイト

では、なぜシリアルコードがあるとアプリがリジェクトされてしまうのでしょうか?

じつは、App Storeの利用規約には「アプリ内のコンテンツ、機能、サービスを購入するときに外部のシステムを利用してはいけない」と記されており、シリアルコードはその規約に違反しているのです。

アプリ内でシリアルコードを入力したユーザーにゲーム内の特典を付与すること自体、(そのシリアルコードの入手が取引付随性を伴う/景品上限額を超える等景品表示法等の規制に抵触していなければ)違法ではありません。しかしながら、プラットフォーマーのビジネスモデルは、アプリ内課金(販売)の都度30%の手数料をデベロッパーから徴収することで成立しています。シリアルコードを入力することでアプリ内でユーザーにアイテム付与させる仕組みを認めてしまうと、ユーザーが当該シリアルコードを入手する過程でデベロッパーが課金要素を設けるなどすれば、このプラットフォーマーの手数料ビジネスの抜け道となり得てしまいます。またそういった課金要素の抜け穴として用いなかったとしても、ゲームを有利に進められるシリアルコードを配布するキャンペーンを実施するなどにより、DLを加速させアプリの人気ランキングをコントロールすることも可能となります。このような理由から、プラットフォーマーはアプリデベロッパーがユーザーにシリアルコードを入力させる行為を厳に禁じています。法律的には違法でないことも、まるで違法なことのようにルールメイキングし制裁することができてしまう、それがスマートフォンアプリ市場におけるプラットフォーマーなのです。

今回の制裁がこのシリアルコードの入力キャンペーンのみを問題視したものかは不明ですが、シリアルコード問題を理由とするアプリの「リジェクト」と呼ばれる制裁は、今年2月に『バーコードフットボーラー』にも下されており、今に始まった話ではありません。なお、同アプリはプラットフォーマーからバーコードというタイトル自体が問題視され、事実上の強制改名を余儀なくされて、現在は『BFB2015 サッカー育成ゲーム』にアプリタイトルが変更されています。

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こういうことが既に実績としてあったとはいえ、さすがに売上トップランクのアプリが本当に「刺される」とは、運営会社のミクシィ社も予想していなかったのでしょう。予想しなかったと言えば、今年4月、デベロッパーの意思とは関係なく突然日本のAppStoreの最低販売単価を100円→120円に値上げし、お祭り騒ぎになったのも記憶に新しいところです。今回の事件で、販売価格決定権のみならず、デベロッパーの生殺与奪権さえもプラットフォーマーが握っていること、業界最大手のデベロッパーであってもその力には抗えないということが、改めて認識されることとなりました。

シリアルコード問題に限らず、プラットフォーマーによるアプリデベロッパーへの規制は強化される傾向にあります。今回はAppleのAppstoreでの出来事でしたが、GooglePlayも昨年9月のデベロッパー規約変更の内容今年5月からアプリの事前審査を強化しはじめたところを見るに、いずれGoogleも同様のスタンスとなることが予想されます。弊ブログでも、「現代消費者法」に森亮二先生がお書きになったプラットフォーマーの消費者に対する責任とアプリデベロッパーに対する優越的地位の濫用についての論稿をご紹介したことがありましたが、いよいよ、あのときの森先生の懸念が現実味を帯びてきたように思われてなりません。