人材業界の有識者たちが、「これって法的に大丈夫なの?」とざわついているのがこのニュース。

従業員を転籍、元の職場に派遣 リンクトブレイン(日本経済新聞)
人材派遣のリンクトブレイン(東京・千代田)は顧客企業の従業員を部門やプロジェクト単位で転籍させ、派遣社員として元の職場に送り込むサービスを始める。従業員には転籍前と同額の給与を保証する。利用企業は人件費を変動費にできるほか、派遣人材の質に悩まされなくなる。事業再編のペースが速いIT(情報技術)業界やゲーム業界での利用を見込む。
人材会社が人事管理や教育を受託する米国のPEO(共同雇用)制度を参考にした。米国のPEOは日本の職業安定法に抵触する可能性がある。しかし「労働者派遣の仕組みを使えば職業安定法の『労働者供給事業の禁止』を離れて日本でもPEOと似た人材サービスが可能」(アンダーソン・毛利・友常法律事務所の上田潤一弁護士)という。
日本版PEOの導入では、リンクトブレインは顧客企業と最短で12カ月間の契約を結ぶ。契約期間の終了後、顧客が契約更新を断れば、リンクトブレインは派遣社員を別の企業に送り込む。

PEO(Professional Employer Organization 共同雇用)制度を日本にもってくるというアイデアについては、2008年8月に当ブログでもご紹介したことがあります。しかし、実際にそれをサービス化したのは、本邦初なのではないでしょうか(この点について追記)。

共同雇用=元企業・PEO会社双方との二重の雇用関係を維持する米国版PEOをそのまま日本において実施すると、職業安定法第44条で禁止される労働者供給事業に該当し、違法となります。そこで、本人の同意のもとPEOサービス提供企業に転籍をさせ(つまり元企業との雇用関係は切断させ)た上で、特定労働者派遣に切り替えるスキームで元企業に派遣労働者として派遣する手法ならば適法となるのでは、と考えられていました。記事中の「顧客企業と最短で12カ月間の契約」などの記載から、リ社もこのスキームを前提としているように見えます。

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しかし、従来は可能と思われたこの特定労働者派遣切替スキームを使った日本版PEOも、その後、2012年の労働者派遣法改正で導入された第35条の5と第40条の9により、原則禁止されるに至っています。

(離職した労働者についての労働者派遣の禁止)
第三十五条の五  派遣元事業主は、労働者派遣をしようとする場合において、派遣先が当該労働者派遣の役務の提供を受けたならば第四十条の九第一項の規定に抵触することとなるときは、当該労働者派遣を行つてはならない。
(離職した労働者についての労働者派遣の役務の提供の受入れの禁止)
第四十条の九  派遣先は、労働者派遣の役務の提供を受けようとする場合において、当該労働者派遣に係る派遣労働者が当該派遣先を離職した者であるときは、当該離職の日から起算して一年を経過する日までの間は、当該派遣労働者(雇用の機会の確保が特に困難であり、その雇用の継続等を図る必要があると認められる者として厚生労働省令で定める者を除く。)に係る労働者派遣の役務の提供を受けてはならない。

例外としてカッコ書きされる「厚生労働省令で定める者」とは、60歳以上の定年再雇用者が前提のかなり狭い範囲に限られています。この条文の追加により、現状日本でPEOサービスを提供しまたは提供を受けるのは、ほぼ不可能となってしまったように思われます。

個人的には、規制緩和と強化の間をフラフラしながら「働き方改革」なるどっちつかずの標語を掲げて混迷を深めている日本の労働行政にも様々問題はあるように感じているのですが・・・。条文上は何らか抵触してしまいそうなリ社のこのサービスが何か別の解決策を用意しているのか、また行政がどのような反応をするのか、続報を待ちたいところです。
 

2017.8.6 10:00追記

株式会社アウトソーシングとその子会社株式会社PEOでも、日本版PEOをサービスとして提供しているようです。twitterのたにやんさんのつぶやきで知りました。