先週のこと。とある企業法務の大先輩と、経営者・マネジメント層との関係で期待されている、または当該層に提供したい法務の役割とは何かについて、「戦略法務」をキーワードにお話しをしました。

そこで大筋で一致した意見というのが、そういった幹部層との関係にフォーカスした場合の法務の役割とは、
(1)ダメなものはダメと言う気概と、それを根拠と理屈をもって理解させ最後の砦を守る役割
(2)もう引き返せない時点ではなく、早くから相談に乗り実現に近づくための修正案・代替案を提案する役割

この2つに尽きるんじゃないか、というものでした。

一方で、これを「戦略法務」と呼ぶことに自信が持てずにいました。そもそも、戦略という言葉自体が抽象的・多義的ですし、法務のあり方というのは企業の規模・業態・ステージによって千差万別で、予防法務・臨床法務・戦略法務といった「◯◯法務」でキレイに分類し切れるものでは必ずしもないからです。実際、この「◯◯法務」でキーワード検索してみると、実にさまざまな解釈が存在するのがおわかりになるかと。


そんな折、シティライツ法律事務所水野祐先生が、“法務の企画術”という一風変わった切り口から、先生が考える戦略法務とは何かについてコピーライター阿部広太郎さんとの対談で語っていらっしゃり、その考えのあまりの一致にびっくり。しかもとっても分かりやすい。少し長くなりますが、業界でも目立った存在なためにアグレッシブなだけの弁護士と誤解されがちな水野先生の本当のお考えがよく伝わる対談になっているので、その点でもぜひ紹介させていただきたいと思います。


「wishのないコンプライアンスこそ、日本の閉塞感の象徴」弁護士・水野祐による法務の企画術(ネタりか)
nowishnocomliance



まず、戦略法務とは、ビジョンを出来る限りそのまま実現する支援をするのに必要なロジックを早期から緻密に積み上げていく仕事である、という点について:

何かこれまでにない、新しい企画を通そうとする時、「その企画がなぜ必要なのか」「社会にどういう価値を提供できるのか」っていうビジョンがまず存在すると思います。

多くの場合、そのビジョンだけでみんな突っ走ろうとするのですが、もう1つすごく重要になるのが、「ロジックを立てられるのか」ということなんです。つまり、法的な適合性を、何らか現行法の解釈の中で立てられるかどうか。

だから企画とは、ビジョンとロジックの両立が必要。両立して初めて上司を説得でき、会社を説得でき、社会を説得できる企画になるっていう話を、最近はよくしていますね。
企画においてビジョンは当然あるべきだけど、そこに至るまでのロジックっていうものも絶対存在しなくちゃいけない。そして、そのロジックの中では、法律的なものの積み重ねが果たす役割がとても大きいんですよ。

だから僕は最近、そういう部分を「戦略法務」と呼ぶようにしています。
これまでの法務の役割って、予防法務か紛争解決、つまり「事前」か「事後」かっていうことにはっきりと分けられていたんですね。でも最近は、この一歩前段階の法務の重要性が高まってるんじゃないかと思うんです。


そして、法務が最後の砦を担うことの重責と、そこで企業活動を止めないための早期相談体制の重要性について:

僕はこういうスタイルなのでよく勘違いされるんですけど、企業で何かをストップさせる法務部門の役割とか、ディフェンシブなことをちゃんと言う弁護士の存在も絶対に必要なんです。僕だってダメなものはダメだって言うし。だから、そういう機能とかそういう役割の人を「保守的」と見下しちゃ絶対ダメというか、それがすごく大事であることも大前提として認識しておかないといけないんです。
攻めすぎたというか、予防法務が機能していなかったから大問題になったという事案は世の中にたくさんあるんです。僕はただ「とはいえ今の時代は保守的なばかりじゃダメだよ、食われちゃうよ」っていうことを言いたいだけなんですよね。

だからこそ、もっと戦略と予防法務の両方、つまり戦略法務を重視しないといけない。企業でも、やっぱり法務機能は今後ある程度二分していく必要があるのでは、と最近よく思います。
重要なのは「法務的な相談は最後に持っていくんじゃなく、最初から相談すること」だと思うんです。やっぱり法務部門って何でも最後に持ってこられるんですね。だから「今の段階で持ってこられても無理!」みたいなのが多くなり、保守的な対応をせざるを得なくなってしまう。

でもその一方で「最初から相談してくれれば、もっと何とかなったのに……」みたいなケースも確実にあるんです。


昨今多数報じられる信じられないような企業不祥事を見るにつけ、この一見当たり前にも見える「マネジメントや現場から早期に相談がもらえる関係づくり」がうまくいってない現状が、かなり多くの会社で存在しているのだろうと感じています。

もちろん、法務部門だけの責任ではないはずですが、この現状を法務パーソン側から少しでも変えていくために具体的にはどうしたらいいのか、思うところを私なりに提案していきたいと思います。